人材紹介契約のおはなし
定型契約の一つである人材紹介契約について。
NDAとまではいかなくても、結構な数を見ることになると思います。
(ベンチャーなら特に)
東京だと紹介フィーを初年度年収の100%取るところもあるらしいですね。
結構な金額になるので、定型契約とはいえ金額については慎重に確認したいところです。
さて、その人材紹介契約に必ずといっていいほど入っているのが
「紹介した応募者を選考し始めたけど採用しなかったという場合でも、紹介後1年間の間に採用したら当社の紹介扱いとしてフィー払ってね」という仲介料回避禁止条項(名前は適当)です。
要するに、人材会社から紹介された人がいて採用したいけど
人材会社経由で採用すると安くないフィーが発生するから、直接コンタクトとっちゃえ
みたいな人対策で設けられている条項なのです。
人材会社としては、会社根幹のサービスでそんなことやられたらたまったものではありません。
なので、契約書内に見かけないことはまずないという頻出条項です。
仮に仲介料回避禁止条項を規定しなかった場合、紹介会社としては被紹介会社にどのような請求ができるかを考えてみましたが
・不法行為
→形式的には直接コンタクトをとって採用している以上、そもそも人材会社の被紹介会社に対する債権が発生しているのかどうかが疑問です。ですので、債権が発生してないため権利侵害の要件を満たさず、不法行為は成立しないと反論されると考えられます。
・信義則
→人材紹介契約という契約の性質を考えると、人材会社を回避して直接コンタクトをとる行為は誠実とは言い難いと思われます。とはいうものの、信義則ベースの請求を頼りにするべきではないので、現実的ではありません。
...と、あまり有効な感じではないスキームしか浮かびませんでした。
ですので、紹介会社からすると契約書での必須条項ですね。
もし回避禁止が規定されていなくとも、人材確保という点ではやるべきではないと思います(最近では紹介会社間でブラックリスト的なものが共有されているなんて噂も聞きます)。
とはいうものの、なんでもかんでも紹介会社の手柄にされると困る場合も存在します。
「人材会社が紹介した応募者を被紹介会社が採用しなかった場合であっても、人材会社の紹介後1年以内に応募者を採用した場合は、紹介会社を経由した採用とみなしフィーの支払義務が発生する。」という条項を例にすると
直接応募や他の会社からの紹介が重複することを考慮し「人材会社が紹介し選考を行った応募者が」と修正すべきでしょう。
その他だと、フィーの発生が内定時ではなく入社時となっているか、早期退職時の返金規定に変な制限(退職から5日以内に紹介会社に連絡が必要とか)が入っていないかという点が注意点ですね。
早期退職時の返金率については、自社の人事担当と話し合って決めるのでよいかと。
自社の早期離職率が高い場合は返金率高めに設定したいですし、逆もまた然りです。
法務は伝え方が9割
法務ってヒアリング能力が必要だよね
と、法務として働き始めた頃から感覚レベルで感じてはいたのですが、最近になって強く実感してきた感があります。
他社で法務をしている友人とも話したのですが、これに関しては意見が割れることなく一致しますね。
さて、なぜヒアリングに着目し始めたかという点について。
一人法務ということもあり、それなりな頻度で顧問の弁護士にお仕事をお願いします。
いわゆる大手の事務所の方なのですがこの顧問が大変ステキな方で、その事務所内でも非常に評価されている若手弁護士です。一人法務の私としては盗めるだけ盗みたい指導役みたい存在ですね。
現職に転職して1年なので、その顧問弁護士とのお付き合いも1年くらい。
それなりな期間一緒にお仕事をさせてもらって、盗むにはまず分析だろうということでまずは今まで依頼した仕事のやり取りを見返してみました。
契約書チェック・作成、法律相談、その他諸々の類型をお願いしているのですが、仕事の種類が何であれ全てに共通しているのが「相談したらすぐに細かいヒアリングをしてもらっているな」という点でした。
思い返しても、正直若干くどいくらいまでに色々とヒアリングがされているなと。
当初は「そんなことまで聞いてどーすんだよ」とは思っていたのですが、スタンスとしてはそれぐらいの方がいいのかもしれません。
少なく聞いたら再度ヒアリングする手間が相手にもこっちにもかかる上に、聞いたことを全て使わないといけないというわけでもありませんからね。
ということで「依頼を受けたらすぐに、ちょっと細かいなというレベルくらいまでヒアリングする」というのを最近実践しているのです。
やる前と比べて、だいーぶ仕事が速くなったなという実感が得られてきています。
ヒアリングが大事である具体的な理由として頂いたリプなのですが
(感覚的な私の「大事」をばっちり言語化していただきました)
状況把握、獲得目標の共有等、それがきちんとできてないと、適切な回答できませんからね。また、適切なヒアリングができていたとしても相手(社内外問わず)に伝わらないと虚しい気持ちになるので、個人的には続編で「法務は伝え方が9割」も出したいです。 https://t.co/A7ZfEiZ4u7
— マイニチぱみゅぱみゅ(●´ω`●) (@Utastm) 2017年5月26日
どんな業務にも必須である状況把握を正確に行えば、連動してお仕事の質が向上するのは当然ですし
目標の共有がされれば必要なこと・不必要なことが見えてくるので、仕事の速度が上がるもの当然でしょうし
ヒアリングが重要だという私の感覚は間違ってなかったのかなと。
多少余談ながら。
ヒアリングが最初にちゃんとできていればその後の着手が多少遅れても挽回可能ですが、後回しにしちゃうとどうしても全てが後手後手に回っちゃいます。
期限が迫ってきている段階でヒアリングは、そもそも気まずくて色々聞くというのが不可能ということも...
(こういう状況に陥ってしまったときに、いかに「今着手したんじゃないですよ感」を出して場を凌ぐかというライフハックもあるにはあるのですが...笑)
ヒアリング大事なのは分かったから、じゃあ具体的にどうしたらいいの?という疑問をお持ちになった方!
すいませんまだ上手く表現できないです笑
なかなかばっちりな書籍も見つからず、現状もっと深く分析していくしかないという状況です。
固まってきたらまたご紹介できればいいなあと思います。
一応ながら参考にしたことのある書籍をご紹介
リーガルクリニック・ハンドブック 第2版―法律相談効率化のための論点チェック―
- 作者: 丸の内ソレイユ法律事務所
- 出版社/メーカー: ぎょうせい
- 発売日: 2016/11/11
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る
がっつり弁護士業務用のチェックリストのため、直接法務業務に当てはめられないですが
ヒアリングと言っても何したらいいのよという昔の自分には、大まかなイメージを掴む上で有益な本でした。
他には「法律相談のヒアリングってカウンセリングに似てるよね」という雑な思いつきで買ったカウンセリングの本が意外に役立ったという話もあるのですが、それはまた別の機会に。
※なお、タイトルにある「9割」の数字の根拠はありません。感覚です笑
本の感想 徹夜しないで人の2倍仕事をする技術三田流マンガ論 ─三田紀房流マンガ論─
『徹夜しないで人の2倍仕事をする技術三田流マンガ論 ─三田紀房流マンガ論─ 』 (コルク)
- 作者: 三田紀房
- 出版社/メーカー: コルク
- 発売日: 2017/02/06
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
法務に全く関係ありませんが、グッと来るものがありましたのでご紹介です。
ビジネスマン(ウーマン)な人にも、予備とか司法試験とかの受験生にもオススメの本です。
一本の週間連載でも難しといわれるマンガ界で、二本も週間連載しながら原稿を落とさない三田さんの仕事術が載っています。簡単にご紹介しますと
・ 漫画家は締切に遅れてもいいと思ってる人が多いけど締切りは守れ
→当業界に当てはめてもぴったりですよね...
・ 時間をかければいいものが書けるなんて幻想
→契約書でも論文答案作成でも同じことだと思います
・ 自己満足のために複雑なことに手を出さない
→複雑なことはえてして誰も求めてないことが多いですよね
・ マンガを書けるようになりたければマンガを書け。いくら練習しても作品書かないと1銭にもならないよ
→今日伊藤塾の答練講座申し込んできました...!
...などなど。
耳が痛いという方もいらっしゃるのではないでしょうか?笑
全部で100ページ前後ですのでホントのスキマ時間で読めますし
何より378円で178円分ポイントが還元されますので、実質200円というお手ごろ価格です。
オススメです~
ストーリーでわかる営業損害算定の実務
初のブックレビューです。
(いざ書いてみると難しいもので...)
ツイッター上で話題にもなっていた書籍ですので、タイトルだけでもご存知の方は多いのではないでしょうか?
営業損害の賠償請求を見据えて、というわけではなく、単純に興味があったので手にとって見ました。一言で言うとオススメです。
○ 総評
・ 読み物?書式集/チェックリスト?
→読み物です
・ 難易度は?
→易しいが、詳細な解説もあり幅広く対応(後述します)
○ 概要
ある日、主人公の遠出太郎(弁護士2年目、イソ弁)の元に顧問先の社長が相談に来ます。
顧問先は食料品の卸業を営む会社で、腐敗していた自社商品を取引先スーパーに卸してしまいます。取引先スーパーは腐敗した食品を販売したことで営業停止という損害を被り、主人公の顧問先に多額損害賠償を求める内容証明が届いたとのことでした。
請求されている金額はどう考えても高すぎると思う太郎でしたが、どういう理屈で請求されている金額を下げればいいのかが浮かんできません。
そんな頼りない太郎が、大学時代の同期である西野(会計士7年目)とボス弁の飯島先生のアドバイスを頼りに裁判を戦っていく...というお話です。
○ 形式的な面への感想
物語形式で話が進むので、とにかく読みやすいです。ストーリー→解説→ストーリー→解説...補講という順で進み、ストーリーの補足や説明しきれなかった点が解説に記載されています。解説の方が多少細かい話になるので、解説のわからない所は読み飛ばすなり、そもそも1周目は解説を読まないというともありだと思います。この読み方なら社会人でも平日の1日か2日で読めるので、とりあえず1周したい私にとってはとてもありがたい構成です。
既にある程度知識のある方には向かない印象を受けられたかもですが、最後に「補講」という章が設けられており、会計の専門的な知識に関する記載はここにまとめられています。法務マターからはちょっと外れますが、決算書ができる過程や監査ってどうやるのとか、会計士目線の面白い内容が詰まっています。直接担当することはないにしても関係することは多い業務ですので、こちらも興味深い内容でした。(ここはやや手抜き感がありましたが...苦笑)
といった感じで、難しい内容は記載はするけど読まなくても本編読むのに何の問題もないよ、というメリハリの利いたスタイルがとてもGoodでした。
○ 内容的な面への感想
自分数学苦手だしな...と思って本書を敬遠してる皆様、大丈夫です!複雑な計算式全く出てこないので、安心して手に取ってくださいませ。高校数学の評価が2~3を漂っていた私が大丈夫と思うので間違いはないと思います(堂々とした感じで)。
B/SとかP/L読めないと辛いだろうな...と思って本書を敬遠してる皆様、大丈夫です!会計に無頓着な主人公が成長していく物語ですので、本書をきっかけに会計に興味を持つというので全然大丈夫です。
といった感じで、何かの知識がないと読めないというわけでは全然ありません。
営業損害の算定だけでなく、訴訟前から訴訟終了後まで一貫したストーリーで構成されているため、訴訟手続きを学ぶのにも役立ちます。裁判官の心証や後々の訴訟追行まで考慮した主張の立て方、相手に対してはどのような証拠開示を求めるべきでどう特定するか、のくだりはとてもいい勉強になりました。若手のときにやってしまいがちなミスやその対策も載っていますので、働き始めの弁護士・法務担当者の方にも役立つ記載があります。
他には「手続法がイメージできん!苦手や!」と苦しんでいる予備・新司受験生の方にも、全体をイメージするいい参考になると思います。おまけ的ですが、新司H24年民法 設問3は食料品に関するトラブルで損害賠償請求ができるかどうか、という話でしたね。過去問は「できるかどうか」ですので損害額の算定なんてまったく必要ありませんが、「これは『損害』といえるのだろうか」という目線と、損害かどうかを見極める感覚を養うのはとても重要だと考えてます。重要条文である民415に基づく損害賠償請求の要件に「損害の発生」があるので、当たり前っちゃあ当たり前ですが...
○ ぼんやりと思ったこと
「逸失利益の算定って、どうやって性格に計算しているのだろう」と思っていた時期がありました。本書を読み、他にもマーケティングの本やらを読んで分かったのは、利益等の数字を出すときの最終目標は「ある程度確かであろう数字を算出すること」なのだろうなと思うようになってきました。えいやあで算出するわけにもいかないし、かといってぴったりと真実に合わせるのは不可能...ならば、できうるかぎり本当の数字を算定する努力をし、それで決めてしまうということですね。
あるビジネスから生じるであろう利益が1円単位で正確に算定できるなら、弁護士なんてやっている場合ではないと思います。そんな人はマーケターになった方が数倍稼げると思いますので。
以上、ストーリーでわかる営業損害算定の実務のブックレビューでした。購入を悩んでいる方や考えている方は、気楽な感じで買ってみることをおススメします。
○ 余談
完全に勝手な妄想ですが、会計面に疎い太郎を支えてくれる大学同期の西野さんは、こんな感じのショートヘアできりっとした美人だと決めつけています(女優の波瑠さんです)。
そして自分を主人公に重ね合わせれば、本を読む手も進んで仕方がない...かもしれません笑
法務視点でクレーム対応を考える
法務系Advent Calendar 2016の記事です。
○はじめに
初回記事でも触れましたが、私のお題は「法務視点でのクレーム対応について」です。
法務担当と言いながら、ベンチャーという規模上、それ法務の仕事なのかな?みたいな仕事も振ってきます。
そういうのを何個も担当しているうちに「法務関係ないと思ってたけどこれ法務のバックグラウンド活かせるよね」と感じた仕事の一つがクレーム対応なのです。経験の棚卸しも兼ねてこのテーマにしました。
急なクレームやクレームに関するヘルプ依頼を受けたとき、以下のプロセスで考えていけば最悪大ハズレはしない(はず。多分。おそらく。maybe.)と思われます。流行りのフレームワークチックに使っていただければと思います。
独自理論なところがばっかりですが、そこはご容赦を。
○ 想定事例
全部フィクションです。念のため。
自社は化粧品の販売を主な事業としており、以下のキャンペーンを実施していましたとします。
・ 自社のWEBサイトで一万円以上の化粧品を購入した人を対象に
・ オリジナルのハンドクリーム(非売品)を
・ 購入月の翌月末日間でに郵送でプレゼント
上記を元に、自社にAさんとBさんからお問い合わせがありました。
1) Aさんからのご連絡
・ 2016年1月に1万5千円分の化粧品を購入
・ ところが、現在(2016年3月31日)になってもプレゼントが届かない
・ 未配達の原因は自社のキャンペーン担当者の不手際によるもの
・ リクエストは①どうしてこのような事態になったのかの説明②何かしらお詫びはしてもらいたい、の2点
2) Bさんからのご連絡
・ 今回のキャンペーン中に購入した化粧品はない
・ しかし、一部の人間にだけプレゼントするのは不公平であり差別であるので、その様なキャンペーンは許されない
・ リクエストは①不公平な扱いをされて不愉快なのでキャンペーンの意図を自分が納得いくまで詳細に説明する②自分にハンドクリームを送付する、の2点
1.まずはじめに
「落ち着く」が、何よりも優先してすべきことです。急に電話対応を迫られて、しかも相手が激しい口調で怒っているという場合、パニックになってしまうこと必定です。そんな状況で受け答えしても、間違いなく良い結果にはなりません。相手の勢いに押されて「~をさせていただきます」なんて安請合いしまおうものなら最悪です。
頭が回転しない・マズいと思ったら、まずは一旦保留にしましょう。身近に相談できる人を探し、いないようなら後ほど回答する旨をお伝えし、一旦電話を切りましょう。一分一秒を争うような案件でない限り、電話だけで受け答えするのは得策ではありません。
2.最終ラインを決めましょう
交渉と同じです。相手のリクエストにどこまで応じれるか、という基準点を決めましょう。
ここは良くも悪くも事業部の方針次第なところがあります。誠実に対応が方針なら手厚いお詫びが最終ラインになるでしょうし、適当でOKという方針ならアリバイ的な対応程度以上はしないともなるでしょう。
とはいえ、事業部の判断の幅にも限度がありますので、それを超えていると考えた場合は意見もすべきだと考えてます。必要以上に強気な対応をしてしまえばいわゆる炎上の恐れもあります。妥協しすぎ(引きすぎ)や強く来られたから譲った、では他のお客様に説明がつきませんし、話が広まってしまえば収集がつかなくなる可能性もあります。
「クレーム対応本の『毅然とした対応が求められる』率は異常」なんて皮肉を聞いたりしますが、毅然とした対応が求められるのは事実です。毅然とした対応のために、妥当な最終ラインの設定が必要なのです。
想定事例に当てはめると、①では自社が悪い以上何かしらのお詫びはすべきでしょう。事業部と相談の結果、3000円のクーポン送付までなら対応可と決まったとします。②は、相手の主張に何も理由がない(区別・差別についての論証は避けます笑)ので、全対応不可と判断される方が大多数ではないでしょうか。以下もそのように進めます。
3.説明すべきかどうか
説明責任。ぼんやりしている割にしょっちゅう耳にする単語でもあります。
無論、自社が悪ければ誠実に説明するのはとても大切です。言い訳と取られないように注意しましょう。が、本当に今説明が必要なのかはきちんと考えないといけません。また、説明するにしても、今説明しようとしていることは本当に外部の方に話してもよいのかという観点も持たないといけません。ということで、ここでは「必要性・許容性(相当性)」さんに登場してもらいましょう。
保護責任者遺棄を例にするなら、先行行為や親族その他発生原因がなければ救護義務は発生しませんよね。何もないところには義務は発生しないはずなのに、「説明しろ」と言われたから説明しないといけないと考える方は多いようです。「説明する必要があるのか」をきちんと考えた上で、次の行動に出ましょう。必要があるかどうかは、自社の対応に不手際があったかどうか、お客様の言い分に理由があるかどうか、あたりが判断基準になると考えてます
また、説明する必要があるとしても、何から何まで話してよいというわけではありません。機密に関連してしまうなど、自社にとって著しく不都合であったりする「許容範囲外」なものはご説明はできません。許容範囲外かどうかは各社で判断が変わるところかと思います。説明しないとリクエストが続くかと思いますが、そこは諦めていただく他ないでしょう。
想定事例に当てはめると、①では自社の不手際である以上、可能な範囲でご説明するのがよいと考えます。単なる不手際なら、どのような経緯で発生し、今後の防止策まで添えると誠実ですが、これは状況次第です。対して②では、そもそも説明する必要がない上、説明対象が自社の営業戦略の一環である「キャンペーンの意図」を求められているため、説明することの許容範囲外であると考えられますので、お答えしかねるでしょう。
4.決着をつけるべきか否か
序盤に「交渉と同じ」と書きましたが、性質上取引とはと同じように見えて、完全に同じではありません。
取引に関する交渉の場合、相手と自社の求めるものが近いことが多いため、お互い妥協の上決着するというのが多いでしょう。しかし、クレームに関する交渉の場合、自社の求めるものと相手が求めるものがかけ離れている場合が少なくありません。②のような事例だと顕著ですが、この場合相手が引き下がらない限りは永久に続きます。
そこで考えるのが「本当に決着をつける必要があるのか」という点です。必要がないなら、決着はつけなくてよいのです。説明と同様、何かあると「完全に解決しないと...」と思い悩む方が多いように思いますが、これも決着させる必要性次第で対応は変わります。
②のように、全リクエスト対応不可となると連絡は続くことが多いのではないでしょうか。リクエストに応えて決着、だけが解決策ではありません。引き下がっていただく他の手段も検討してみましょう。
5.今回のケースをまとめると
①では丁寧にお詫びをした上、可能ならば不手際が発生した理由と今後の対応策をご説明します。その上で、お詫びとして3000円クーポンご送付のご提案というのが妥当ではないかと考えます。
対して②では、プレゼントはお渡しできないし、キャンペーンの意図は説明できない旨をお伝えします。何度連絡を頂いてもこの結論は変わらないでしょう。
6.おわりに
丸ごとは無理にしても、法的な考え方を通常のお仕事に流用できる場面は多々存在します。どこかで聞いた「ロースクールで養った法的思考力はビジネスでも生きる」という意味が分かる気がします(まあ私ロースクール行ってないですが)。
今回紹介した各ステップ共通して言えることが①適切な基準を考えて(義務を特定することを含み)②事例を基準に当てはめ③妥当な結論を導くというプロセスで考えるという、これぞまさに法務のバックグラウンドが生きる場面です。
よく言われますが、クレーム対応はよりお客様の心を掴むチャンスでもあります。何でもかんでも「毅然とした対応」をしてればいいというものでもなく、そこが大変難しいところでもあります。なので的確な最終ラインの設定には気を遣いますが...。正解のない仕事の典型ですので、腕の見せ所です。
また、困っている現場の人たちを、客観的にもっとも適切な方向に導いて助けるという、これって法務の醍醐味じゃありませんか?
加えて現場の方とダイレクトにやり取りする上、困ってらっしゃることが多いので、上手く解決できれば信頼を得られる絶好のチャンスでもあります。意中の異性が見てる前の仕事だと「良い所見せてやる!」と気合が入ると思います。それぐらいの感覚で望みましょう!笑
センシティブ目なトピックですので、かなーり省略して書いてます。もうちょっと深いところや事例の話など、聞きたい方がいらっしゃれば続きはWE...じゃなかった!1/9の交流会でお話できればと思います。
それでは、次はmsut1076さん、よろしくお願いします!!