リーガル・レバレッジ

リーガル・レバレッジ

企業法務スタッフが自分の市場価値を上げようと模索する日々を綴ります。

企業法務はくだらないのか

 ありがたいことにリクエストいただいたので書きます。さらっと書く予定だったのが予想外の壮絶な難産に見舞われるという。

 結局のところ仕事が嫌な理由の根源を探すと人間関係に行き着かざるを得ないわけで、法務が嫌だった理由をつらつら書いていると前職の職場に対する悪口の羅列になってしまいうーむ困った、という感じでした。頑張ってそういう部分は削ったつもりではあるのですが、全体としてネガティブな内容になってしまってます。ご了承くださいませ。

 

では本題ですが
 企業法務をやっている人に「企業法務ってくだらないですよね?」と言われたときになんと返せばいいのか。「その通りだよ」でしょうか。「そんなことないよ」でしょうか。私なら「会社変えてみたら?」ですね。

 くだらないと思う気持ちはよく分かるけど、そんなことはないよという感じです。「前向きにやってればいつか面白くなる」的な気持ちの持ち方次第みたいな話ではなく。

 

 私は前職時代に「二度と法務なぞやるものか」とジョブチェンを決心したのですが、そこまで深く決心したのは法務職を見限っていたからです。結局会社を変えて今も法務を続けているのですが、イヤイヤではなく「法務って面白いなー」と心を改めたので続いてます。

 この自分の心境の変化は何を示唆するのかと考えたのですが、要するに会社の体質・上司と同僚の質と人間性アサインされる業務次第で職務に対する評価は全く変わるということで。当たり前の話ではあるのですが。その中でも法務特有チックな部分をピックアップしてみました。

 

期待値の高さと今のポジションの乖離

 トピックはかっこいいのですが、今時の若手風に言うとコスパ悪いよねの一言に片付きます。コスパが悪いと思う理由は以下。

 

理由その①
 そもそも仕事ができるようになるためには自己研鑽が必須の職種です。普段の仕事をこなす+法律のお勉強+英語のお勉強+会計のお勉強+α。まあしんどいですね。周囲の同期たちが飲み会や合コンにふけっているのを横目に机に向かわないといけない、なんてこともよくあるわけです。他が遊んでいる時間に自分は遊べず、上司からもそれが当然のように言われてプレッシャーかけられると。とりあえず他より楽ができる仕事でないことは間違いなしです。

 まあでも、それは仕方がないでしょう。自分で選んだ職種なんだし、頑張ってれば上を目指したり待遇がよくなったり期待できるし。

 

...いや、しなくない?っていうか無理じゃない?というのが2点目に繋がります。

 

理由その②

「管理部門はコストセンターだから少しでも出費が出ることは罪だと思え」

 

 言い方の柔らかさや多少の文言を代えて、このような趣旨の話を一体何度されたことやら。要するに管理部門だから

・お前に払う残業代は無駄だから残業は一切ならぬ(1.2年目の私にそんな無茶な)

・雑用や掃除は他部署の分も率先してやれ

・早出して創業者の銅像や入り口付近を綺麗にしろ

・(営業部には実施している)製品研修は業務時間にやらせるとコストになるから、プライベートな時間を使って自分で製品を触れ

 「会社のコストにならないために能力を向上させていただきます」みたいな気持ち悪い文章をよく分からない研修レポートにも散々書かされたり。

(今から思うと単なるマインドコントロールです)

 会社全体からの法務に対する評価も低かったですね。おだてれば色々と雑用引き受けてくれるぞっていうのが周囲にばれてたので、上辺だけの「プロフェッショナル」「重要な役職」なんて言葉はたくさん頂きましたが。

 

 現状厳しい扱いを受けているからと言って将来も厳しい待遇になるとは限りませんが、ここまで雑な扱いを受ける部門に所属していて先があるとはどんな楽天家でも思わないでしょう。役員構成見てると経理から出世の可能性はありそうでしたけど。法務は無理、無理でないにせよキャリアかけてまでコミットするほどの可能性はありませんでした。

 法務での出世が難しいという理由につき、奥村先生の下記ツイートが大変参考になりますので是非ご参照くださいませ。

 

 

理由その③

 総合職だなんだと言われても、やはり法務の本質は事務職です。事務職の典型的なデメリットとして

・定型作業が多い(自分の裁量なんて出る幕も無い)

・労働集約型であるがゆえに自身の評価や給与にレバレッジが効きにくい

・プロダクトが日の目を見ることは滅多にない

 

 身も蓋も無い言い方をすれば、面白くない上に楽もできないの一言に尽きます。

 プログラミングの発達やAIの登場で事務作業に注力してる場合ではないという危機感を持っているにもかかわらず、振ってくるのは事務仕事ばかり。マクロや電子化で作業を減らそうと思えば「仕事をサボりたがるゆとり」の烙印。散々手間隙かけて作った契約書は日の目を見ることなく(当たり前だけど)保管用ファイルに一直線でおしまい。何だこの仕事は?

 

 営業さんのように数字で挽回するみたいなことができないので、上司の匙加減次第で評価が決まっちゃうというのもキツいところ。

 古き良き(イヤミやで)会社だと、前述した諸々の雑用に加えて、飲み会での宴会芸強要や休日消費型のレクリエーション企画幹事なんてのもざらに有るわけです。グチグチ。
そして受諾を渋ろうものならエンドレスパワハラの繰り返しが始まります。こういうのをやりたがらないのは普段世話してもらっている感謝の気持ちが足りないだの、これも仕事だから出る義務があるだの。じゃあ休日出勤扱いにしろよって話なのですが。グチグチ!

 サラリーマンである以上そういうところで評価がついてしまうのはやむを得ないのですが、にしてもこれは酷いだろうと。

 法務の大きなメリットに「転職が容易」があるって聞いてたのに、このままじゃまともな条件で転職なんてできん!と焦りを募らせ、溜まりに溜まった焦りが法務への失望に変わっていくのでした。

 

 

それではここで上記3点をまとめてみると

他の職種より技能向上に負担がかかり

会社からは無駄金使い扱いされて「雇っていただいてありがとうございます」アピールをしなくてはならず

スキル向上につながりそうにもない雑用が山ほど振ってくる

楽もできない上に裁量も無くプロダクトが日の目を見ることもない 仕事

が、当時の私の「法務職」だったのです。これは嫌になると思いません?笑

 

 3~4年程法務として働いた私は、こうして法務が嫌いになっていくのね、ということで法務をやめる決意をして退職したのでした。

 

 

...辛気臭い話ばっかりですいません!

ちゃんとポジティブなオチが待っているのでもう少しお付き合いくださいませ。

 

単なる事務職を超えられるか

(事務職は会社に不要であるという趣旨ではない。念為)

 ここまで法務のことをボロクソに言っておきながら、現状でまだ法務としてやっているのは惰性ではなく「法務は頑張る価値があるポジション」という意見に変わったからです。

 

 今の職場には、事務作業を減らす工夫を「またゆとりがサボろうとしている」と言ってストップかける上司はいませんし、上辺だけでなく本気で重要職として扱ってもらえて、自分の考えは尊重してもらえる裁量もありますので、上記の理由その①で挙げた「自己研鑽に要する負担が大きい」ことを踏まえても良い職だよなと思います。会社規模が小さくなったとはいえ、経営に近いポジションを経験できたのは変えがたい経験でした。

 また、水野先生の法とデザインの副題である「創造性とイノベーションは法によって加速する」というのが理解できると一つ壁を越えられる(かつ自分が理解していると)と勝手に考えてます。あれがダメだこれがダメだと指摘して人のビジネスの助けになっているかどうか分からない状況から、自分の力で自社のサービスや人事制度の向上を手助けできるわけです。法務という仕事に対する見方が変わってとっても楽しくなりますよ。

 

法のデザイン?創造性とイノベーションは法によって加速する

法のデザイン?創造性とイノベーションは法によって加速する

 

 
(ルール=人を縛るだけのものという既成概念を変えられるんだ、ということが分かったような気になっている自分に酔っているだけというのは否定しません笑)

 人間の重要な欲求に「承認欲求」というものがある以上、役に立ってるかどうか分からない仕事を続けるというのは難しいものです。目に見えた結果や実感が得られるフェーズに入れるか、入れるところまで我慢ができるかというところが分岐点かなと。

 

 前職時代は少なくとも一日に5回(起床時、出勤前、仕事前、昼休終わり際、退勤時)は仕事嫌だ会社辞めたいと思ってた私ですが、今の仕事に変わって2年ほど経った今でも一度たりとも会社行きたくないと思ったことがありません。正直手元の仮想通貨が1億になろうが2億になろうが仕事はやめないぐらいには気に入っています。

 それは仕事が楽だからじゃないのか?いえいえ労働時間も対応している案件量も前職時代より激増してます。案件管理用のタスク表見てると増加量が顕著ですね。

 

 結局のところ、見切りをつけるほどに私が法務を嫌ったのはその会社固有の事情による部分が大きかったのだなあと。

 

 最後に一部例外(会社を変えても法務は好きになれない)として、本人の志向や適性と合わない場合。こればっかりはどうしようもなかとです。営業がやりたくて仕方がないのに管理系に配属されたとか、インプットが苦手以前に文字読むとかのが苦痛な人から法務への拒否反応なくすのは不可能に近いところ。そんな状況本人にとっても会社にとっても不利益なので、早めに職種転換をさせてあげるのが賢明です。受け入れられなければ結局転職という選択肢になってしまうのですが...

 

 というわけで、「企業法務ってくだらないですよね?」という問いかけを自分が受けたときは
 くだらないと思った理由を聞いてみて、それが事務職に対する不満である場合は職種転換を、法務という仕事に対する不満である場合には「会社変えてみたら?」という答えを返してあげることになるのかな、と思いました。

 

 

ベンチャー法務は面白いぞ、というポジショントークを最後に添えて)