リーガル・レバレッジ

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コンサルに転身した元企業法務パーソンが、自分の市場価値を上げようと模索する日々を綴ります。

法務の目標設定と数値化

 評価に関する良い記事を見たので便乗。定量目標・数値化に関するくだりが特に共感ポイントだったので数値化の話も交えて書きます。

 

 

目標設定に数値化は導入すべきが私の立場ですし、評価以外にも使える数値化の話なのでうまく業務に使ってもらえると嬉しいです。

数値化に関する書籍として孫社長にたたきこまれた すごい「数値化」仕事術が大変参考になるので、適宜紹介しながら引用します。

シンプルな事しか書かないので実践も簡単なはず。コンサルぶっていきましょう。

 

1.何のための評価?数値化?

評価も数値化もツールでしかないことに留意する必要があります。その観点からは記事内トピック「2 目標設定の3つの目的」はとても大事だなと。

 

評価も数値化も目的があるから実施することです。

評価でいうと成長支援や組織目標達成、数値化でいうなら問題(売上が低い、進捗が遅れているなど)の特定や生産性の向上など。ツールというのはあるべきと現状のギャップを埋めるための手段なので、まずはあるべきの話を設定するのが大事というお話です。 

 

目的があいまいなままやる評価や数値化って意味ない、どころか手間ばっかり増えるんでデメリットなんですよね。経験ありますけど。

 

2.数値化の目的と役割

自分の体験談を交えて、法務関係で数値化をする際の難しいところ・陥りやすいミスとその対策方法を書きます。まずは数値化術の引用から。

 

「今週の新規顧客獲得数と獲得コストは、こうなりました」孫社長への報告がそれで終わったら、たちまちカミナリが落ちます。

「『どうだったか』はいい。『どうするか』を話せ」

数値化は、過去を振り返って満足するためでも、だれかを悪者にしたりするものでもなく、未来を作るためのものである。そのことを、ぜひ肝に銘じてください。

 

「数値化の目的は『どうだったか』ではなく『どうするか』」という点、認識OKでしょうか。

 

法務内における目標設定で数値化すると「契約書審査●件処理」や「法律相談●件対応」等になるかと思います。しかし、振り返り時に目標に達したかどうか見るだけであったり、上司が到達しなかった部下を責めたりするのだと何も生まれません。

(「次回以降達成が確実な置きに行く目標しか設定しない部下」は生まれるでしょうけど。私のことです)

 

目標未達なら目標値そのものか部下のどこかに問題があるはず。その問題は何か、どこにあるのか、なぜなのかを特定し解決することで生産性を向上する施策を考えるための数値化です。

明確な指標をベースに部下を批判するものでもありませんし、数値化をすればすぐに問題が解決されることもありません。

 

使う目的や求める役割を間違えればパフォーマンスなんて出るわけありません。

「メッシが守備で頑張ってくれないんだよなあ」とぼやく監督がいたらどうでしょう?

それはメッシじゃなくて監督のあなたに問題があるんじゃないの、と思いますよね。

 

3.数字は与えられるものではない

「法務の仕事は定量化しにくい」「営業みたいに分かりやすい数字がない」とまことしやかに語られますが、本当でしょうか。

売上だけで営業の人の評価を決めている会社がそんな多数有るとは思えないのですが、営業の人は工夫なく数字を適当に持ってくるだけで数値化できてしまっているのでしょうか。

 

パフォーマンスに厳しい某有名なおちんぎんの高い会社で営業をしている友人にお話を聞いてみたところ「売上だけなわけないよー笑」だそうです。

営業に必要な色んな要素を数値化して見られるようで、利益はもちろん地域や年度の特性も数値化されて評価に影響するとのこと。要するに、営業の人の成績に関する数字は与えられたものではなく自分たちで確保してきたものということです。

ここでまた数値化術の紹介。

個人が直面している問題を、上司や他部署の人間が正確に把握できることはまずありません

現状を把握できなければ、正しい問題設定もできないので、それを解決するために役立つ数字を集めることもできません

 

本当にその通りで、業務のどこで躓いているのかを知っているのは他ならぬ被評価者、広くてもせいぜいその直属上司くらいです。友人や同僚の数字の取り「方」を参考にするのはよいですが、数字そのものを持ってきても上手くいかないでしょう。

 

じゃあどうやって自分で数値を取ってくるのよ、が次の話です。ポイント絞って2点だけ書きます。

 

① コントロール可能な数字を選ぶ

失敗する数値化目標の一例として「契約書審査を1件●日で終わらせる」があります。無理です。

なぜ無理なのかといいますと、契約書審査業務は完結させるまでに自分以外の手が多数入るため時間をコントロールできないからです。

前述のとおり数値化の目的は「これからどうするか」を考えるものなので、コントロールできない数字を紛れ込ませてしまうと問題特定を邪魔する上に振り返りも検証もできなくなります。

 

② 分ける

ではどうやってコントロール可能な数字をピックアップすればいいのでしょうか。方法は色々ありますが、私が一番好きな方法だけ。

業務をプロセスに分けましょう記事中でも言及されているこの部分が分かりやすいので見てください。

具体例としては、ファーストレスポンスまでの平均期間を法務部としての目標として設定し、その達成を各メンバーに求めるメンバーに意識させる必要性が高くなります。

「契約書審査業務」とくくってしまうから見にくくなるので、分解してしまいましょう。受付→ヒアリング→審査→修正→回答→交渉→締結。ざっくり考えただけでも7ステップあります。分解すれば何がコントロール可能で何が不可能か見えますよね?

 

コントロール可能な数字を選ぶにあたって業務をプロセスで分けるは大きなポイントになりますので、悩んでいる方は参考にしてみてください。プロセス分けは目標設定以外にも使える思考方法です。

 

4.本の紹介で締めます

ぶつぶつと書籍を紹介しながら書きました。重回帰分析とか込み入ったテクニックの解説も分かりやすくされてますが、そもそも数値化とは的なところから解説されてるので数値化初心者・不慣れな方におすすめです。


統計系の本でアピールされている「入門」「数学知識不要」の9割は虚偽であることが統計上明らかになっています。私の中で。この本は残りの1割に入る良本です。

 

ずっと言い続けているのですが、数値化スキルもスキルの一つなのでやれば伸びるしやらなきゃ伸びません。数値化下手な人の特徴に「最初から完璧を求める人」「人の案に文句ばっかり付ける人」というのがありまして、ビジネスの基本であるスモールスタートができない人とかなり近いものがあるなと。

 

数字を扱えるのはビジネスの基本ですし、法務の人は苦手な人が多いのでちょっとできるだけでも浮かび上がれる余地があります。法務の枠外に打って出たい人は是非にでも身に着けるべきスキルだと考えてますので、ぜひ。