リーガル・レバレッジ

リーガル・レバレッジ

コンサルに転身した元企業法務パーソンが、自分の市場価値を上げようと模索する日々を綴ります。

コピライト 2017年9月号

気がつけば9月ももう終わり...

8月に頑張ろうと思った矢先に、すっかり書けないまま今を迎える

ナンテコッタイ/(^o^)\

気を取り直してさくさく書く

 

1.著作物の公衆への伝達利用と権利制限

 

弁護士 三山裕三先生の、過去に開催された著作権研究会の講演録。

条文の文言に沿いながら各用語の定義もしっかりと、という私好みのスタイル。

 

内容は、無形利用の中の、上演権から口述権(22~24条)についてのお話です。

有形利用と無形利用について条文の要件がなぜ違うのか、とか基本的ながらも大切な部分に言及されてたり、色々と発見があります。

各ケースの検討で紹介されている社保庁LAN事件なんかは、実際に相談されることもありそうなケースです。

「自社内でどこまでなら●●のコピー配布していいですか?」とかとか。

一読しておくと役に立つと思いますよ~

 

2.国内ニュース 判決文が公表された著作権事件

6月23日から7月23日までに判決文が公表された事件が紹介されています。

 

ちらほら見かける発信者情報開示請求事件、3件ともAVの無断配信事件です。

コピライト自体マジメな雑誌で、文章も「被告は、インターネット接続プロバイダ事業等を行う電気通信事業者である~」みたいな固い感じなのに、急に

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こんな成人向け映像作品のタイトルが出てくると笑っちゃうじゃないですか。

 

おかげで危うく

「法律系雑誌を読んでニヤニヤ笑うリーガルオタク」

の烙印を押されるところでしたが、映像作品のタイトル及び内容を詳細に説明することで事なきを…得れたのかな・・・

 

3.コピライトビギナーVol.6 実用品の著作物(応用美術)

「著作物性が認められにくい類型の総決算」とあるとおり、今までを考えるとかなりハイボリュームの3.5ページ。

応用美術というのは要するに美術を日用品に応用したもののことで、典型例としてはカッコイイ家具とかTシャツのデザインとか、です。

固まっていない分野ながら、現状最も妥当なボーダーライン(著作物にあたるかどうか)は何かというのが提示されています。

あまり業務柄多用する分野ではないので最小限を抑えておきたい私は、とりあえず掲載されているこれだけ抑えておこうという省エネ思考です笑

 

本題とは無関係ながら、論文式試験を見据えている身としての感想。

筆者の小坂先生の文章なんですが、序論から問題(論点)提起の流れがめちゃくちゃ綺麗です。

 

ふんふん

なるほどそういうことだよね

あれ?でもここが引っかかるような…

ああ、次で解説されてる

 

という、とっても自然な流れで話が展開されているので凄く読みやすいのです。

 

「一読して明快な、読み手に読み返しをさせないような文章を作れ」

というのは大抵の文書作成本で書かれているポイントですが、こういう文章のことを言うんだろうなあと毎回感嘆しながら読んでます。

企業法務系の人以外は手に取る機会が限られると思いますが、機会がありましたら是非読んでみてくださいませ。

英会話サークルに行ってきました

座学でインプットしてばっかりでは使える英語は身に付かない。

と分かっていてもどうしても腰を上げられず、転職サイトのスキルシートに「英会話:日常会話レベル」にチェックを入れることすらためらっていた私ですが、遂に行ってきました!

大学生も混じっての英会話サークルなので、英会話学校とかみたいに大金も払ってませんし、多くても週1回の頻度です。

しかし、しかしですよ。とりあえず第一歩が踏み出せたのでついついブログを更新しているのです。(「とりあえず」って大事なんですよ!)

 

鉄は熱いうちに、ということでメモも兼ねて。

 

発見した課題

  • 分かってはいたけど、簡単な単語でもスッと出てこないことが多い
    →向上あるのみ。浮かばなかった単語はメモして復習する。
  • 事実ばっかり話しても意味がない
    →大事なのは、自分が「何を感じて、どう考えたか」ということ。特に英語では。「去年USJに行きました」だけでは会話は広がらない。
    →もっと感情表現ができるように。感情フレーズは重点的に勉強する。
  • 質問してばっかり
    →感情表現と共通するが、自分のことをしゃべる時間が少ないためどうしても質問が多くなってしまった。慣れるまでは日本語での準備をもっと入念に。

収穫

  とりあえず継続あるのみですね~

BLJ 2017年10月号

届いたので読む。いつもどおり気になった3点の感想。

 

1.誹謗中傷・炎上への対応実務

 誹謗中傷への対応は北岡先生(@h_kitaoka)が執筆されています。

 ちょうどトレンドの話題ですね。

 

www.bengo4.com

 

 内容を発見しましたが、削除/発信者開示請求の要件や具体的な対応方法がまとまっておりこれは便利...!

 取りうる各手段(目的に対して効果的なアプローチ)をどういう基準で選べばよいか、メディアごとの特性(請求に当たっての注意点)など、実務的な視点も満載です。

 退職者からの評価というのは必然的に厳しくなりがちで、求職者に対して影響力のあるサイトに自社の酷評が掲載されるというのは人事にとって気になるところ。

 実際にそういう相談も受けたことがあるので、いざ必要だなーってなったときに使いたい、という個人メモ含み。

 

 ちなにみ当社の場合というのは

 「うわー、これ多分●●さんだけどキッツいこと書いてるぅー!でも指摘されてる会社の悪いところは当たってるねー!」という感じで収束したのでした。ベンチャーってフランクなのさ。

 ちゃんちゃん。

 

2.法務部門における品質確保・向上の方法論

 今回の連載は、法務業務をいかに「標準化」するかというお話。

 頭を悩ませてる方も多いと思われるこのトピック。専門性が高い業務とはいえ、人によってアウトプットがぜんぜん違うようでは困る。でもマニュアルや雛形で全部確実に網羅するのは無理。じゃあマネージャー的な人が全部に眼を通すかといわれるとそんなの余計無理...と、行ったり来たりでそもそも問題点の整理もできていない状況に陥りがち。

 個人的な感想ですが、法務業務が標準化しにくいのは、業務の専門性に加えて「人」の問題があると考えています。

 担当者にとって、業務を標準化するインセンティブって何でしょうか?

 標準化されて自分の業務をできる人が増えました。自分の仕事は自分にしかできないはずだったのに。「●●君だけが頼りだね!」なんてセリフはもう聞けなさそうです。

 標準化されて自分の業務をできる人が増えました。普段から業務に関するインプットを頑張り、本来難しいはずの業務を整理して簡単にしてノウハウを共有した結果、自分がいなくても当該業務は円滑に回るようになりました。

 特定の人に業務が依存するのは会社としては避けたいことですが、労働者側からすれば極力狙っていきたい状態です。仮に給与交渉をする場合、自分がやめれば滞る業務があるというのは相当に強いカードですよね。

 そんな強いカードを自分から手放す理由って何なのでしょうか?

 

 こんな感じで、担当者にとって「業務を標準化する」ことのインセンティブって一見見当たらないのです。そりゃ誰も標準化に協力も注力もしてくれないよっていう。

 前職に、プライド富士山全部自分で抱えまくりでパンクしているけど死んでも仕事離さないマンがいました。

 なぜ仕事を他に渡さないのか当時は疑問で仕方ありませんでしたが、ある程度中心的な位置づけを任せられた今は彼の気持ちが分かります。

 何もしなければ自分の地位は安泰です。なのに、大したメリットもないどころか、お払い箱になるリスクを抱えてまで自分の仕事のノウハウは人に渡したくないのです。

 狡兎死して走狗烹らる。飛鳥尽きて良弓蔵る。誰だって煮られるのも死蔵させられるのも嫌でしょう。

 

 なので、今自分も全然標準化には手をつけていない...

 なんてことはなく、絶賛標準化推進中なのです。

 それはなぜか?というと話が逸れてきますのでまた今度。

 

3.企業法務系ブロガーによる辛口法律書レビュー

 ronnor先生(@ahowota)ご執筆の恒例コーナー。今回は改正民法(債権法)のブックレビューです。

 まずは概要を見渡したい人(頭に地図を作りたい)向けの本、入門は終わってもっと理解を深めたい方向けの本と、フェーズごとに分けてオススメ本が記載されています。注釈のコメントでぽつぽつと辛いコメントが存在感を利かせてますね笑

 概要把握用に、私はとりあえず高須先生の「Q&Aポイント整理 改正債権法」と、潮見先生の「民法(債権関係)改正法の概要」でも読もうかなと。

 きちんとした読み込みは、立法担当者の方が書いた書籍が出るまで待ちます。

 最近葉玉先生の本の良さを再実感しているので、立法担当者の方の書籍信仰が強まっているのです笑

 学者本と立案担当者解説との乖離につき、経文緯武‏ (@keibunibu)さんのコメント が参考になりますのでご紹介です。

 

 

 

襲名式事件??

話題になっているこちらのツイートについて。

 「返事ないなら勝手に使うよ」ってそりゃあ炎上するよなあという感じですが、態度以前に「人の動画を勝手に利用するのは著作権的にNGだろう」というのが問題視されています。

それに関して、弁護士ドットコムがこんな記事を掲載。

www.bengo4.com

要約すると、ツイートに添付されている動画を著作権者の許諾なく使用しても

テレビ局が時事の事件を報道するのであれば、権利制限規定である法41条に該当し違法ではないとされる可能性がある、という内容です。

で、これに対し野田先生のコメントがこちら。

 

襲名式事件て何だろな?と気になったので、せっかくなので簡単に調査。

あと、今回のとくダネ!の動画利用が著作権法41条によりOKになるのかも検討してみました。

 

1.襲名式事件 事案の概要

 平成元年10月4日、TBSがニュース内で以下の二事件を報道

 ① 平成元年10月4日(本件番組当日)、大阪府警察本部が3年半ぶりに暴力団山口組の一斉摘発を行い、組員47人を逮捕し、組事務所など28か所を捜索したこと。
 ② 山口組では、平成元年7月20日、A新組長の5代目襲名式が行われ、新組長の威光を末端組員に対しても周知徹底させる目的で、この襲名式の模様をビデオテープに収録し、その複製ビデオテープを系列の組に配布したこと。

 ②の「暴力団の襲名式の様子を撮影したビデオ(以下「本件ビデオ」といいます)」の影像を放送した点につき、原告は本件ビデオの著作権者が原告であり、TBSがビデオを放送した行為は原告の著作権を侵害するものとして、1000万円の支払を求めました。

 これに対しTBSが、本件ビデオの放送は放送によって時事の事件を報道し著作権法41条を抗弁として主張。(条文の該当部分を下線つけてます)

 

41条「写真、映画、放送その他の方法によつて時事の事件を報道する場合には、当該事件を構成し、又は当該事件の過程において見られ、若しくは聞かれる著作物は、報道の目的上正当な範囲内において、複製し、及び当該事件の報道に伴つて利用することができる。

 

 で、判決は原告の請求棄却という結論になっており、争点である「時事の事件報道のための適法利用の抗弁」については、TBS側の主張が認められています。

 ※本件ビデオが著作物であるという点については、争いがない事実とされています

 ※棄却の理由は41条による抗弁が認められたからではなく、そもそも「原告は著作権を有していない」という点によるものです

 

2.本件ビデオは「当該事件を構成し」ているのか

 広辞苑によると、構成とは「かまえつくること。幾つかの要素を組み立てて一つのものにこしらえること。また、その組立て。構造。」を意味するとあります。ということは、著作物が事件を形成する要素の一つでなければ「事件を構成する」とはいえないですね。

 暴力団の方たちにとって、新組長の襲名は、単なる団体内部の私事ではなく広域暴力団の諸活動にとって重要な役割を果たしているそうです。

 また、本件ビデオの製作及び複製ビデオテープの配付は、新組長の威光を末端組員(系列の団体の構成員)に対しても周知徹底させるために行われたものであり、勢力拡大の動きの一環であると位置付けられていることが認められると。

 要するに、襲名式は単なる式典ではなく威光を示すための重要イベントで、式典を撮影した本件ビデオは単なる思い出作りではなく、記録として残し広く配布することで末端の組員まで威光を徹底させる目的であったということです。

 そうだとすると「襲名式の様子を撮影しビデオを配布した」ことそのものが「時事の事件」であり、本件ビデオはその事件の一部を構成するものであるというのは、違和感のない結論ですね。

 

3.台風動画の転載は違法か

 条文の文言・襲名式事件のいずれをベースに考えても違法だというのが私見です。

 前述していますが、条文の文言が「事件を構成し」となっており、著作物が事件の要素となっていることが法41条により著作権者の許諾が不要となる要件です。今回のケースは「台風」または「台風による被害」という事件を単に撮影した動画であり、事件を構成するものではありません。また、襲名式事件は著作物である本件ビデオがまさに事件の一部という事案であり、今回のケースは射程外だと考えられます。

 

 

コピライト 2017年8月号

現在、会社でBLJとコピライトを定期購読しています。

せっかく定期購読させてもらっているので、多少なりとも還元したいなと。

ということで、読みっぱなしというのはなんなので、届いたらさらっと感想を3点にまとめようと思った次第です。備忘という意味合いも含め。

 

1.知的財産推進計画2017の概要について

 まず、こんな計画があったということを始めて知ったのですが笑

 ざっくりというと、今後は大中小どの企業でも知財の活用は不可欠で、そのためには知財の創造・保護・活用の基盤となる知財制度を整えねばならんと。

 そこで、知財システムの構築、知財活用による地方創生とイノベーションや2020年までとその先を見据えたコンテンツ産業活性化を柱にしていく、という内容です。

 (http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kettei/chizaikeikaku20170516.pdf

 

 一番興味があるのは「知財システムの構築」の、特にデータの利活用促進のための知財制度等の構築ですね。

 インターネットの発達に伴って、知財の保護というのはとっても難しくなっているわけです。もう当たり前のように行われてるYouTubeでのゲーム実況配信だって、無許諾で行えば公衆送信権(著23Ⅰ)を侵害し違法です。ですが、リーガルに関係ない人は「違法かも?」と疑問を持つところにすら至らないのがほとんどですよね。

 言ったらなんですが、こんな状況で罰則等を強化したところで状況が改善するとは思えません。ではどうすれば?というところでですが

 どうせ厳しくしたって勝手に使われるなら、利用条件(営利目的不可とか)を決めて大枠を作ってその範囲で使ってもらうのが一番望ましいと考えてますし、そういう流れになってきています。任天堂さんのCreators Programなんかはすごくステキだなーと思っております。

r.ncp.nintendo.net

 

 とはいえ、こんなばっちりとしたものを自作できる会社は限られているので、標準的な指針なんかを策定してもらえると事業者の方は助かるだろうなあと思うのです。

 

2.日本のアニメーション100年を振り返って

 日本動画協会・著作権委員の方が寄稿されている記事です。

 こちらも初めて知ったのですが、日本初のアニメが公開は1917年@浅草だそうです。

 内容についてですが、アニメ作品に関する利用許諾について実務的な点がたくさん紹介されています。一次利用と二次利用を区別する必要性、出資された金銭の扱いなどなど。契約書見たりする際に一般的な条件を知っているのは凄く大事ですので、もし今後お仕事をすることがあれば参考にさせていただきたいなと。今のところそんな予定はありませんが笑

 映画と同じで、アニメだって多数の人が製作に携わるんだから権利処理大事ですね。制作委員会とかが絡んでくるとややこしいな...

 

3.コピライトビギナー

 今回は建築・設計図の著作物について。前々号の言語、前号の地図に引き続き、著作物性が否定される傾向強いシリーズ。

 10条1項6項に「図面」と例示されているので、図面である設計図は含まれそうですね。とはいうものの、言語も地図もですが、極めて実用的な表現に対して不用意に著作権法による保護を与えるのは妥当ではありません

 では、どういう図面が保護対象となると判例は判断しているのでしょうか...というお話です。小坂先生が大変コンパクトにまとめていらっしゃるので、あまり引っ張ってくるのはよろしくないのでこれ以上は書けません笑

 気になった方は是非購読してみてくださいませ~