リーガル・レバレッジ

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コンサルに転身した元企業法務パーソンが、自分の市場価値を上げようと模索する日々を綴ります。

法務業務の可視化と図解

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この記事は、法務系 Advent Calendar 2021 12月25日のエントリです。 

 

図らずもトリを務めることになってしまった中川です。
当初は「法務をやめた人が法務に戻ってもやれるのか(意外にやれる)」をテーマとする予定でしたが、トリにしては地味だな...と思い方針転換。

ぱっと見で華やかに→パワポ使うか
法務の人がよく課題感を持っていること→図解だな
トレンドなこと→アドベントカレンダーで可視化の話がよく出てたぞ

の3点から、法務業務を図やパワポで可視化するために何をすればよいか、をテーマにすることとしました。

そしてせっかくのクリスマスなので、プレゼントとして私が法務業務でよく使う図形や参考例パワポもダウンロードできるようにしました。業務に活用してもらえると嬉しいです。

それでは本題行きましょう。

1.図解が法務のお仕事に活きる場面

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そもそもとして、図解ができたとして法務業務に影響はあるのでしょうか。言い換えると「ワードで文書作成」が主な仕事の法務パーソンに「パワポで図・イメージを作成」は不要な可能性があるのでは、との疑問がありますね。


問いへの答えとしては「図解ができなくても法務業務はできるけど、できるととっても捗る」です。

図表現の最大の特徴は「大枠での把握ができる」点にあります。説明方法としては、聞いてもらいやすくかつイメージを合わせやすい。記録方法としては、スピーディーにメモができてかつ記憶喚起が容易。良いツールだなと。


法務パーソンのお悩みに
「事業部の人が話を聞いてくれない」
「依頼者と考えていることがあっているか不安」
「案件記録はしないといけないが手間をかけたくない」
はとてもよく聞くところで。このあたりのお悩みに刺さり倒すな、が実感です。

コンサル時代から「図解で表現できれば法務業務が捗るのでは」と仮説を持っていましたが、いったん法務に戻って仮説が正しかった手ごたえを得ています。

具体的に、図解が主に活躍している場面としては
・契約スキームの認識合わせ
・プロジェクト型業務での分析・PMO
・計画立案・実績報告
の3点。


特に契約スキームの認識合わせで活躍していることが多く、ちょっとでも案件が複雑になればすぐに登場させています。(全件やっているわけではありません。ややこしいな…と感じた時だけです)
ヒト・モノ・カネ・情報(権利)の流れと繋がりさえ分かってしまえば、書類への落とし込みは容易ですね。

プロジェクト型業務や予実報告でも使えます。というか、こちらの方が本来的な使い方でしょうか。

裏ACでは「評価=実際のパフォーマンス×見せ方」をテーマに可視化の大事さを書きました。記録に残す・読んでもらう(理解してもらう)ための可視化で、表現ツールとしては図が優れています。おすすめです。

2.なぜ法務の人は図解が苦手なのか

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Twitter上で「図解ができるようにならないとな…」とつぶやいている方、よく見かけます。一方で「自分は図解が得意です」と話す法務の人は見たことがありません。セミナーや登壇資料でもパワポを適切に使えている方もほぼいません。
自分も昔はバチバチに苦手でした。これはなぜなのでしょうか。


理由を一言でまとめてしまうと「レーニングしていないから」です。これに尽きます。
①インプットした情報を基に②思考/処理して③表現する、の流れは契約書の作成もパワポの作成も何も変わりません。

「私契約書作るの苦手なんですよね…なんでですかね…」と法務未経験の人が悩んでいたら、声をかけるはずです。「そりゃそうだよ」と。これと同じです。


繰り返しになりますが、表現に至るまでのプロセスは「インプット→思考/処理→表現」です。
文章で表現するか、図で表現するかで途中のプロセスも変わります。法務パーソンはパワポ作成や図解が苦手で当然な面が大きいです。そのためのインプットや思考に慣れていなければアウトプットは必然的にガタつきます。


つまり即ちですが、最後の表現における些末なこと、いわゆるテクニック部分だけ磨いても意味がありませんSNSでよく見る見られる文字のサイズは●ptとか、フォントはXXにすべきだ…の話のことです。
一般的なもので揃ってりゃ何でもええのだわ、くだらな、と思いながら見ています。個人の見解です。

改善すべきは図解のための「思考」と、思考から逆算したインプットです。兎にも角にもここが最重要ですね。

3.図解を習得するために何をすべきか

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上記で「図解が苦手」を解決するためには、図解に向けた思考を磨くべきだ、の話をしました。
最後に、解決に向けた具体的なアプローチを書きます。私が色々試行錯誤した中で、これは意味があったな、これはなかったな、と思ったものを書きますね。


■やるべきこと

①基本動作・思考を抑える
俯瞰して、分けて、並べる/繋げる。言いたいところにだけ1色を使う。分析の基本ですが、図解にも丸ごと当てはまります。

パワポは分析した結果を表現するツールなので当たり前な感もありますが、この動作は本当に本当に重要です。最初の第一歩、一丁目一番地…言い回しは何でもよいのですが、これが全ての起点になるポイント。できないと何も始まりません

並べる繋げるは構造化なので、法務パーソンはできるはず。俯瞰と分けるが大事で、特に俯瞰が大事です。全体感を掴めない図やパワポの価値はとても低いので、気を付けたいところです。

「分析」自体は別テーマですし、語り始めると文字数が足りません。別記事に譲りますが「分析ができれば図解もできる」ぐらいの位置づけであることは覚えていただきたいです。

②型を抑える
形式ではありますが、図解にも型があります。参考資料として記載したカタログの図形以外使わない、ぐらいの気持ちで実践してみてくださいませ。使う図形に悩む時間はムダ以外の何物でもありません。その時間は思考に回すべきです。

③1枚で勝負する
長編がストーリーになって全体の繋がりが明確、なパワポを作るスキルはとても特殊なスキルです。単発の図解ができることと、パワーポイントを成果物として納品できることは全くの別物。

そして法務パーソンに長編パワポ作成スキルは必要ありません。図解の目的はあくまで「法務業務を捗らせるため」であり、目的以上のクオリティもムダでしかありません。自分の実体験でも、議論の土台や記録にするための一枚が作れれば必要かつ十分。(プロジェクト型業務は例外です)

また「勝負する」もポイントですね。実際に作らないと絶対に上手くならないので。


■やってはいけないこと

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最後に、やってしまいがちだけどやってはいけないことを書きます。無益どころか有害なレベルのものに絞って書いていますので、ぜひ気を付けてみてください。

①図以外を書く
原則として「図」以外は書いてはいけません。図解なので当たり前です。以下、図解やパワポに書いてはいけないものの典型。

・長い文章
→箇条書きを超える文章はNGです。文章を書くのであればワードという適切なツールがあります。パワポの「テキストボックス」も例外的にOKな位置づけ。法務パーソンが本当にやりがちなNG動作なので要注意です。

・写真、アイコン、イラスト
 →重要なのは「思考」結果である、と何度も繰り返しています。思考の表現でないものを使ってはいけません。

 →また、他にも大きな問題として「探す作業で失う時間」「再現性のなさ」があります。「良い図はないかなー」とWEBを漂う時間があれば考えることに使うべきですし、何より欲しいクリエイティブが見つからなかった場合はどうするのでしょうか。仮に運よく見つかったとして、次回も見つかるとは限らないはずです。「会社」を表現したいのであれば「会社」を箱の中に書いてしまえば5秒で終わります。

②いきなりパワポいじりから始める
新人時代に「契約書のいじりから始めるな」と口酸っぱく言われた記憶はありませんか。同じです。「まずは思考から」は絶対に外してはいけません。
スタートのオススメはホワイトボードです。iPadでもよいですが、ホワイトボードの小回りには勝てません。あと画面が小さい。小さい画面からは小さい発想しか出ない、は本当です。

③変にオリジナリティを出す
これも新人時代に言われた記憶はございませんか。既にある資産は最大限に活用しましょう。車輪の再発明に意味はありません。
まずは人の資料を探すところから。〇〇 図解 の検索は想像以上に有益であることはもっと広まっていいと思います。


ここまで見ていただいた方には「あれ、これ法務の仕事や契約書作成でも一緒だな」と感じられたのではないでしょうか。
ご理解のとおりです。職種を問わない仕事の基本なのでしょうね。

 

さいごに

ご覧いただきありがとうございました。このエントリが読者の方のお仕事効率を上げる役に立てればとても嬉しく、図を活用していただけるように、張り付けた画像の元データ+おまけの作例集を集めたパワポファイルをプレゼントします。何せクリスマスですからね。

ダウンロードはこちらから。

※クリスマスプレゼントなので、25日の日付が変わったらリンクは消します

※無料配布物なので、私が一切の責任から免責されることに同意の上ダウンロードしてください。変なウイルスとかは入れてません。

 

これにて、表のLegalACは無事感想となりました。よかったよかった。
幹事のkanegoontaさんに感謝しつつ、締めたいと思います。それではよいお年を!

 

付録

本当に付録扱いですが、これは参考になるな...と思った良い資料を載せていきます。

 

コンサルティングファームの成果物

平成26年度知的財産権ワーキング・グループ等侵害対策強化事業
(コンテンツ分野における商標権、著作権等の管理・活用に関する実態調査)
さすがのATカーニーさんです。
レポート部分は図ではなく定量調査の結果なのでパス。20P以降は使えるページが多い。



日本のスタートアップの現状と今後の展望

これもよい。とっつきやすいテーマでは。

 

マイネット決算資料

手前味噌で大変に恐縮ですが、参考になる資料なのは間違いありません。

シンプルな分、上記コンサルティングファームの資料より実用的です。おすすめです。