リーガル・レバレッジ

リーガル・レバレッジ

コンサルに転身した元企業法務パーソンが、自分の市場価値を上げようと模索する日々を綴ります。

クラウドサインを導入した感想を書くよ

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 契約書をクラウドサービスで完結させるキラキラ系IT企業を目指してクラウドサインを導入したのが1ヶ月ほど前。導入したてでたいした件数使ってませんが、使ってみて便利な点や追加されるといいのになあと思った機能をピックアップしました。導入を悩んでいる皆さんの一助になればということで感想を記します。

(導入が捗って弁護士ドットコムの株価が上がれば...という下心があるとかあるとかあるとか。先日の伸び凄かったですね。)

 

1.導入までの流れ

契約書の取交わしにあたって、当社が特に問題と感じていた点は以下の3点

 

① オフィス間をまたぐことで書類の所在が不明になるトラブル

 担「本社に送った書類(契約書、発注書など)は捺印してもらえました?」
 私「そもそもこっちに来てませんぞ?」
 担「えっ」
 私「えっ」


 ...社内便なんてものが存在しない会社だと、書類のステータスが誰もわからないという嫌な事態がしばしば発生しちゃうのです。

 発送するたびにこまめに連絡取れば防げる事態でしょうけど、そういう人の「めんどくさい」という気持ちを想起させる対策はいつか破綻するので対策と呼ばず。この無駄極まりない無駄はクラウド上でやりとりすれば減らせるんではないかなーと

 

② 捺印のたびに毎回金庫を開ける捺印者(マネージャー)の負担

 当然ですが、ベンチャーの捺印権限者はハンコを押すためだけに一日席に座っているなんてことはありません。基本は多忙ですし、本業がある以上当然本業の合間に溜まった捺印書類をまとめて捺印することになります。権限者の出張がそれなりに多い当社なんかですと不在期間は全て捺印がストップすることになり結構なロスが生じちゃいます。

 

③ 製本・送付・管理する法務の負担

 ひよっことはいえ法務暦約6年にもなりますので、製本テープ使ってどれだけ綺麗に製本できるかとかみたいな自己満足からは卒業したいところです。

 契約書のやりとりって単純作業に思えますけど①契約書2通作って②送り状作って③封筒にあて先と自社の情報書いて④投函って意外に時間食ってますからね。外出含めたら5分では足りないのではと思います。積み重なったら相当な時間ですよ。

 

 

 そんな悩みを解消するため、サービスの概要を説明したところ上長からの食いつきも良く、TL上ではっしーさんから熱いオファーもいただいたので弁護士ドットコムさんに行ってサービス内容を説明してもらいました。

 即決はせず持ち帰って検討したのですが、営業の方がクイックレスポンスで的確に質問に対応していただいたのが印象的。うっとうしい電話攻勢は全然ないけどこちらが質問したらしっかり対応してくれるので「いかにもなイマドキIT企業の営業やな笑」と上司とキャッキャしてました。

 

 一応GMOアグリーも比較はしましたが、HP上に記載されている導入事例紹介が寂しかったりデザインがピンとこないという理由でクラウドサインをチョイス。料金とかは大差なかったので最後は感覚な所も。

 リグシーさんの「Holmes」は、クラウドサインの導入を決めてからサービスの存在を知りましたので選択対象に入らず。士業連携機能とか面白い機能が揃ってるし使い勝手がとても良さそうなので、先に知ってたら有力な検討対象になってたと思います。

 

2.クラウドサインの良いところ

圧倒的なお手軽感

 使ってみて実感しますが、PC&クラウド上でやりとりが完結するというのはすごーくすごーく手軽で便利です。スピーディーに締結できるという点について同僚からの評価もおおむね好評なので嬉しい。

 当初の課題を考えても①契約書の所在が分からないという事態はもちろん発生してませんし②捺印権限者の上司からも「外出先からでも捺印できるのチョー楽なんだけど」とギャルのような喜び方をされ③わずらわしい作業から開放された私は本業が捗って仕方がありません。

 契約書取り交わしというお堅い業務にクラウドサービスというイマドキのものを使うので、先方からの質問が多いと結局対して楽にならないリスクが...という懸念はありましたが、利用を打診した相手からもそこまで質問されることは少なく対応に時間も使ってません。

 あと、ボタン押下だけで最後まで完結するというのは最高にステキですね。これはDocuSignとの比較なのですが、DocuSignはタッチパネルとか写真読み込みでのサインが求められますし、なにやらいろいろな機能があって受信者側としては理解するのが大変です。受信者側が理解するの大変=発信者側は理解の助けになる説明が必要ということで手間が増えます。ボタン押下だけだとそんな心配も不要なのがありがたいです。

 

チャットサポート

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 画面右下にあるのがチャットサポートの部分。クラウドサインさんも強くアピールしてる機能ですが、質問したら返信返ってくるのが早いこと早いこと。15:07に私が質問して返信もらったのが15:11なので所要時間4分。いくら日中の時間帯とはいえこれは早い...!

 新規のサービスなので細かい疑問は出ますし、社内や先方から質問された時にとても重宝しています。さくっと聞きたい...でもあまりにも細かい内容だからメールとか電話するのはばかられる...みたいなことを悩む必要なし。ちょっとでも引っかかったらすぐに連絡するスタンスでいれるのは凄く便利です。

 

3.今後に向けてのリクエス

最後に「ここが改善されると嬉しいなー」みたいなポイントを。

承認ルート固定設定機能

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 こちらが契約書の承認ルートを決める画面です。現状だと承認者を直接入力する(左側の黄色○)かアドレス帳からひっぱってきて(右側の黄色○)入力するかのどちらか方法しかないんですね。登録者の上長を自動で設定できないので送信の都度入力しなくちゃいけないのと、設定者次第では承認権限者を外すことができてしまいまして。悪意があるとまではいかなくてもうっかりで外れてしまうことはあると思うので、これはガバナンス的にちょっとなというところです。

 弁護士DCの方いわく同様のリクエストは上がってきているみたいですので、機能追加されるといいなーと期待。

 

PDF自動変換機能

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 ご覧のとおり送信する書類はPDF限定なんですけどね...なんといいますかその...

 いちいちワードをPDFに変換するの、めんどくさいなあって...それぐらいやれやっていう意見はごもっともなんですけどね...笑

 なので、ワードをドラッグ&ドロップしたらPDFに変換してくれる機能がついてくれると嬉しいなと。これはホントに必要ではなく有ると嬉しい程度なんですが、やはり面倒なことは少なければ少ないほどいいよねって思いません?笑

PDF変換機能付きプランは月額ちょっと高くしたりとか、そういう手当てで解決していくのもいいんじゃないですかね。適当に言ってますけど。

 

まとめ

 以上色々と書きましたが、感想は「導入してよかった!」の一言に尽きます。

 PDF化とか細かい作業は発生しますが、いちいち送り状作ったり封筒にあて先書いたりするよりかは圧倒的に早く便利ですね。導入に悩んでいる企業さんはとりあえずトライアル的に試してみるだけ試してみればいいんじゃないかなと。固定費用1万しかかからないですし。

 

ぼそっと一言

 クラウドサインってSaaSなので、PCへのインストールとかそういう作業がなくて導入の手間に関しては凄く楽な方のサービスだと思うんですね。しかも当社はベンチャー&業務効率化のためのクラウドサービスに理解の有る上司がいるといった、新規のサービスを導入できる土壌が整っている環境でした。

 にもかかわらずですよ。導入のために動き始めたのが去年の12月で、正式に導入できたのが4月の頭と結局半年近く消費してしまいました。冷静に振り返ってみると結構な衝撃でしたし、簡単に見えることでも「新しく始める」というのはこんなにも難しいものなのかと。新規分野開拓しようとする人マジリスペクト。パないっす。「新規サービスの導入経験者歓迎」みたいな募集要項をよく見かけますが、なるほど納得でございます。

 大小問わず新しいことを始めるというのは、とてもエネルギーを消費するけれど簡単には得られないとても良い経験になるなと思いました。

契約書タイムバトルに参加してきました

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話題の契約書タイムバトルに参加してきたぜ、という記事です。
タグやTLを追っていると「勉強になった」「面白かった」などなど、参加者としてはとても嬉しいコメントが見られました。大したことはできませんでしたが、多少なりともお役に立てたようでしたら幸いです。

大まかな流れを追いたい方はこちらをどうぞ。良い感じでトゥギャっていただいてます。

 

で、それ以外にも「観戦できなかったので詳細が知りたい」「観戦したけどもうちょっと解説があると嬉しい」という方がいらっしゃいましたので、参考になればということで覚えている限りをブログにまとめました。

(自分の部分以外は解説するほど記憶に残ってません...緊張で...笑)

 

1.バトルの流れ

簡単にバトルの流れを説明しますと

①わたし先攻。相手に開示する秘密情報の定義を広くとったり、情報の正確性や完全性の不保証追記。2分ほど消費。

②下平先生が私の追加をすべて削除、反社条項だけ追加。だけで終了。30秒くらい。

③手持ちのカードをそれなりに切ったにも関わらず契約書に残っている部分がゼロ。加えて残り時間で決定的な差がついてこれはさあ大変。慌てる。とりあえず秘密保持義務などをちょこちょこ追記して対応

⑤再度すべて消される。つらい。

⑥準備していた条項集の手持ちカードがなくなる。悩んで時間だけ過ぎても仕方がないので、とりあえず反社条項を消す(とんでもない)

⑦反社条項を復活させられる。そりゃそうだ。

⑧そうこうしているうちに私の手持ち時間がなくなり、ずっと下平先生のターン!

⑨終了

という流れ。こちらが先攻なのに防戦一方という不思議な状況でした。

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攻撃しても攻撃しても流される、まるで北斗の拳でいうトキを相手にしているかのような難しさを感じました。原作と違うところといえば、相対している私がラオウではなくモブキャラのモヒカンであるというぐらいでしょうか。ヒャッハー!水だー!

 

2.ひとりで感想戦

という感じで清々しいくらい綺麗に負けた私ですが、負けをそのままで放っておくのはとてもモッタイナイので、下平先生のスキルを分析して盗もうということで感想戦です。

一通り修正戦が終わった後に自分の修正意図を解説するのですが、そのあたりの解説も下平先生はキレキレでございました。決勝戦業務委託契約でのコメントも聞いておりましたが、契約内容の把握と整理能力、それを理路整然と分かりやすく説明するところがすさまじいなという印象です。

(後で聞いた話ですが、どうやらLINEさん勤務時代に平林先生(シティライツ)の下で働いてらっしゃたようで、なるほどそれはという感じでございました...。)

とはいえ「今回みたいな背景設定がない試合で、契約内容の把握も整理もクソもないんじゃないの?」という考えもあり得るところですが、それは違うというのが参加したからこそ分かる感想。

間近で聞いていて感じたのは、下平先生はヒアリングするまでもなく「良い契約・悪い契約とは何か」というがご自身の中で固まっていらっしゃるのだろうということです。

(実際の業務だとヒアリング結果に合わせるのはもちろんでしょうが)

そもそも双方開示のNDAという性質から考えれば~ですよね、イベント開催の業務委託契約ということから考えれば受託者としては~を入れることがお互いにとって一番いい結果になりますよね、などなど。

ヒアリングができないならできないで、自分なりに理想像を設定してそこに寄せていくという基礎の基礎をとても高いレベルで見せつけられた気がします。ヒアリングナシならそういうのを考えても仕方がないよね~、なんて思考停止して小手先に走った自分が恥ずかしい限りです笑

 

3.最後に

100人以上に見守られながら契約書を修正するという、普通に考えて一生に一回有るか無いかの舞台を与えていただいた弁護士ドットコムの橋詰さん・橘先生、本当にありがとうございました。アピールする場の少ない法務で、名前を売るこれ以上ない良い機会だったなーと思っております。

これを見ている皆さんも、次回とかでチャンスがあればぜひ参加してみてください。もしかしたら有るかもしれませんよ、こういう所に出てくるタイプの法務が欲しいみたいなリクルートオファーが...ウフフ

法務キャリアを始める皆さんに贈る コスト0円の必読法務研修資料

かれこれ6年も前の今頃、私も皆さんと同じように法務としてのキャリアを歩み始めることになりました。

司法試験にチャレンジしようとする意気込みがあったわけでもなく、学部時代にたいして勉強していたわけでもなく、法務に関係するインターンに通ったわけでもなく。当然といえば当然なのですが、そんな私が入社すぐにバリバリ活躍できるほど甘い世界ではありませんでした。怒られ凹む日々が続きます。

とはいえ流石に「最近の若い奴は」「これだからゆとりは」と理不尽な怒られ方をして何も思わない私ではありません。理不尽に怒られるたびにいびつな思いを募らていました。「いつか自分に後輩ができたら同じように怒ってストレスを発散してやろう」と。

そして時は経ち、会社に新人は増えそれなりに後輩を抱える年齢となりました。しかし誤算があったのです。

 

なんか最近の若い人すごくしっかりしてない???

 

これは困りました。新卒くらいの年代だった自分と比べて今の新卒さんたちがとてもしっかりしているように見えるのです。むやみに上げ足をとって理不尽な怒り方をすれば、自分の株を下げるだけという結果になってしまいます。振り上げた拳はどこで下ろせばいいのでしょう。私の自尊心はどうして守ればいいのでしょう。

 

そこで思いつきました。

ブログで新人さん向けにお役立ち風の記事を書けば法務での先輩感を出せるのでは…!

そんな思いでこの記事を書きました。

 

 

…なんの話やねん。長い前置き失礼しました。それでは本題に入りましょう。

 

これを見ていただいている皆さん、新人法務ということは新社会人であると推察します。となると学生や修習生で稼ぎにくい立場だった上に、就活や卒業イベントで財布が寂しいことになっているのではないでしょうか。正確かどうか分からない情報をインプットしたくない、法務に関する書籍で事前予習したいけどお金がない、という悩みを抱えてらっしゃることと思います。

そんな人のニーズにお応えしようということで、私が今までに見た無料の法務系読み物の中で「これは本当に役に立ったなー」と感銘を受けたものを3つピックアップしました。

どう考えても無料で得られるクオリティを超えているものばかりです。ご活用くださいませ。

 

3っつピックアップしましたが、1→2→3の順で見ていただくのことオススメします。

大まかな内容として
1.法に携わる社会人として
2.法務パーソンとして
3.契約書の条項やポイント解説
と総論から各論の並びになっています。業務として役に立つ可能性が高い順位で見ていくほうが効率よいですからね。

それではどうぞー

 

1.新人・若手弁護士向け メモ(大西洋一先生)

 

言わずと知れた大西先生の新人向け心得帳。記事自体はかなり前(3年くらい...?あやふやです)に作成されたものですが、初めて読んだ時にとても感銘を受けてその後数え切れないほど読み返している記事。いまだに良くアクセスされているとのことですが、それも当然だと思える素晴らしい内容です。

「弁護士向け」ってなってますが、無資格の法務担当者でも全く問題なく流用可能です。「ボス」を「上司」に脳内で置き換えたり、クライアントの取り方は相談してくれる部署からどうやって気軽に依頼してもらえばいいかなど、適宜脳内変換しながら読みましょう。

挨拶や身だしなみなどの社会人的なことに始まり、業務の処理やスケジュール感など基本的なことが全て詰まっています。基本的なことを解説しておられるのですが、基本的であるがゆえに大事なことばかりです。

基本的なことを解説する記事や本というのは得てして抽象論や理由付けが薄いものが多いですが、その点本記事では

2 自分の外見や雰囲気に注意を払おう

弁護士に相談に行くなら、やっぱり出てくる弁護士は弁護士らしくあってほしいのではないだろうか。医師の白衣効果は弁護士にも該当するのではないか?

美輪明宏やマツコデラックスはなぜあのような服装をしているのか?

8 チャンスが来ないのはボスへのアピール不足

ボスはランダム配点のようで、その人の能力や人柄を見ている。やりたい事件はやりたいと言う。

「いつまで経ってもショボい案件ばかり配点される」「自分には難しい重い事件を任されてキツい」→どちらもよく聞く勤務弁護士の愚痴ではあるが、おそらく、前者の愚痴を言う弁護士はボスから評価されておらず、後者の愚痴を言うタイプは自分が思っているよりボスから評価されているのだと思う。

 といったように、具体的にどうやって実務で使うかということや、単なる精神論ではない納得感のある説明をされています。書いてあることを取りあえずやってみるのはとても大事なことですが、心から納得しながら手を動かすとよりステキです。

書いてあることを是非実践してください。何度も読み返してください。後悔しないと思いますよ!

 

2.#新人法務パーソンへ(ronnor先生)

ronnor先生が#新人法務パーソンへ というハッシュタグをつけて、新人法務の方々に向けて有益な内容を呟いていらっしゃいます。最初のつぶやきは2015年4月とこちらもかなりの長編で、発信されるたびに多くのエンゲージメントがつく人気シリーズとなっています。

基本的で大事なことばかりなのは大西先生の記事と同じなのですが、より法務領域に踏み込んだアドバイスとなっているので業務のイメージもつきやすいかと思います。私が特に好きなものをピックアップしていきますと

 

いやあ、あるあるですねぇ(遠い目をしながら)。これを守れずに、例えばビジネスで解決すべき話をムリクリリーガル的に解決しようとしたりすると、手をつけた仕事が全部無駄になるんで大変なんですよねぇ(哀しい目をしながら)。

 

カッコよく言うと「判例の射程を見極めろ」ってやつなんですかね。今の案件で使うのに適切な根拠かどうかを頭使って判断しろ、っていうだけの話なんですがそれがなかなかに難しい。

ちなみにですが、むやみやたらに「判例ガー、判例ガー」って言うと煙たがられますよ。自分のやらかし経験談じゃないですけどね笑

 

新人だろうがそうでなかろうが、基本的に自分のアウトプットがノーチェックで外に出るということはありません。直属の指導役なりマネージャーなりのチェックが入るのが普通です。

ではそのことを考慮すると、自分はいつまでに仕事を仕上げる必要があるのでしょうか。少なくとも期日当日にマネージャーに見てもらうのはヤバそうですね。

では上司に見てもらうのはいつぐらいが良いと思います?

答えは大西先生の記事やronnor先生のツイートに。

 

ちなみにこちら番外編

 

たまにですが、行頭の整理とかをインデント機能使わずに全て半角全角スペースで調整する職人がいます。

修正したり手を入れるの大変だからやめてくださいね!早いうちに作法を身につけておきましょう。

 

3.contract-manuals(@kataxさん)

最後はkataxさんの「contract-manuals」です。プログラムのコード管理ツールとしてよく使われるGitHubで、契約書でよく使う条項やポイントをまとめていらしゃいます。プロフ画像のねこさんがかわいい。

私もつい最近知ったのですが、いやーもっと早くに気づきたかったなと。〜の場合に使う条項、〜の契約で見るポイントはここ、といった感じでとても使いやすくまとめられています。変な契約書条項本買うより間違いなくこちらが役に立ちます。プロフ画像のねこさんがかわいい。

terms(条項集)は契約書を実践で見てからでないと頭に入ってこないと思うので、checkpointやstyleguideあたりを見ておくとイメージしやすいかなと。やっちゃいけないこと、極力やったほうが良いことなど温度感も記載されていますので、お作法なのか仕事に害が出かねないことなのかという区別もつきやすい整理がされています。ステキ。

オープンソース的に開放してらっしゃるので、良いなと思った条項があれば積極的にプルリク(追加依頼)してみてはいかがでしょうか。実験兼ねて私もちょこっとだけ追加依頼かけてみました。編集が反映されるには承認がいるので、ダメだったら蹴ってもらえば良いというのは心強いですね笑

 

GitHubの使い方がわからない?

大丈夫!私もあんまり分かってません!

使いながら考えましょう。使いながら調べましょう。それが一番の近道ってもんですよ。

 

〜おわりに〜

以上、私がオススメする新人向け0円研修資料でした。一読しただけではそんなに頭に入ってこないですし、何より頭に入ることと実践できることは別物です。言うまでもないですけどね。

さらっと読んで、本格的に仕事が始まったらまた読んで、行き詰まったらまた読んで、と何度も繰り返し読んでいただくと効果が高いかなーと。

 

それでは、新生活頑張ってください!

法務職嫌がる人も多いけど、色々分かってくると楽しさややりがいも感じられるようになります。
最初は我慢になるでしょうけど慣れるまで頑張ってくださいね〜

 

BLJ 2017年12月号

 

Business Law Journal(ビジネスロージャーナル) 2017年 12 月号 [雑誌]

Business Law Journal(ビジネスロージャーナル) 2017年 12 月号 [雑誌]

 

 

サボってしまった定期購読書籍のレビューシリーズ。ちょっと忙しくなるとすぐ止まってしまう悪い癖が...とウジウジしててもしょうがないのでささっと書きます。前向きに行きましょう。

 

1.法務部門CLOSE UP

 特集対象は住友商事さんの法務部。(コンプラ含めて)50人オーバーが在籍されているということですが、一人に慣れると想像もつかない規模感です笑

 社費での米国ロースクール留学はもちろんですが、定期的に外資や大規模事務所の外部弁護士が出向してきてくれるというのは大変羨ましい。抜群に優秀な人と一緒に仕事すると最初は自分の至らなさに哀しみを覚えるばかりですが、時間が経てばとても効率よくノウハウやスキルを吸収していけます。自分の経験上一番伸びやすいスキル向上/教育方法という所感ですので、部下が伸びないという不満を抱える人は一緒に働いているはずの自分の振る舞いを見直した方が...ゴホゴホ 話が逸れました。

 このコーナーに対するちょっとした不満なのですが、紙面の関係や攻めるような場ではないということを踏まえても記事内容がちょっと表面的過ぎるのかなあと。「法務全体のパフォーマンスを最適化したい」みたいな抽象的なコメントが多く、課題や解決策が参考にしにくいですね。毎回楽しみにしているコーナーなので充実に期待したいところです!

 

2.不正・不祥事対応の最新実務

 ①不正・不祥事実務対応の「現実的な」手引き②外部専門家を活用したフォレンジック調査の実務③不正を行った従業員に対する処分と責任追及のポイント、不正・不祥事発覚後の社外対応の勘所、の4本立て。

 個人的に一番気に入ったのは①。いざトラブルに直面したら、当たり前だろうと思っていることが全然できなかったり思いつかなかったりするもので。その点大枠や概要、基本的なNG事項がまとまっているこの記事はとても便利だと思います。

 BLJの実務解説シリーズは全般がコンパクトで使いやすい内容になってるのが嬉しいですね。

 

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不正発生時のスケジュール表。しょっちゅう対応することがない案件だと、こういうスケジュール感が掴める物はとても重宝します。

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NG対応例。当たり前のことだけど当たり前にできるのかというのがポイント。

 

3.Q&A 法務相談の現場から

 他社から特許権侵害訴訟が届いた際の初動対応、がテーマ。最近のトレンドテーマですね。

 警告書が届いたときに大事なのは「時間稼ぎ」という、ちょっとびっくりな内容。もちろん適当に書かれているわけではなく、なぜ大事なのかが具体的に説明されておりなるほどという感じです。反撃するための準備に時間が必要で、ではどうやって時間を稼ぐかという時間稼ぎの3つの方法も紹介されています。実務家ならではの観点なので見習いたいところです。

 警告書によくある「●月●日を目途にご回答を」という一文が入っていたとして、じゃあそれまでに対応しなきゃいけないの?どうしたらいいの?って悩ましいところですよね。

 

以上、BLJ12月号の紹介でした。

読むと何かしらの収穫があるのが良いですねー

 

Business Law Journal(ビジネスロージャーナル) 2017年 12 月号 [雑誌]

Business Law Journal(ビジネスロージャーナル) 2017年 12 月号 [雑誌]

 

 

企業法務はくだらないのか

 ありがたいことにリクエストいただいたので書きます。さらっと書く予定だったのが予想外の壮絶な難産に見舞われるという。

 結局のところ仕事が嫌な理由の根源を探すと人間関係に行き着かざるを得ないわけで、法務が嫌だった理由をつらつら書いていると前職の職場に対する悪口の羅列になってしまいうーむ困った、という感じでした。頑張ってそういう部分は削ったつもりではあるのですが、全体としてネガティブな内容になってしまってます。ご了承くださいませ。

 

では本題ですが
 企業法務をやっている人に「企業法務ってくだらないですよね?」と言われたときになんと返せばいいのか。「その通りだよ」でしょうか。「そんなことないよ」でしょうか。私なら「会社変えてみたら?」ですね。

 くだらないと思う気持ちはよく分かるけど、そんなことはないよという感じです。「前向きにやってればいつか面白くなる」的な気持ちの持ち方次第みたいな話ではなく。

 

 私は前職時代に「二度と法務なぞやるものか」とジョブチェンを決心したのですが、そこまで深く決心したのは法務職を見限っていたからです。結局会社を変えて今も法務を続けているのですが、イヤイヤではなく「法務って面白いなー」と心を改めたので続いてます。

 この自分の心境の変化は何を示唆するのかと考えたのですが、要するに会社の体質・上司と同僚の質と人間性アサインされる業務次第で職務に対する評価は全く変わるということで。当たり前の話ではあるのですが。その中でも法務特有チックな部分をピックアップしてみました。

 

期待値の高さと今のポジションの乖離

 トピックはかっこいいのですが、今時の若手風に言うとコスパ悪いよねの一言に片付きます。コスパが悪いと思う理由は以下。

 

理由その①
 そもそも仕事ができるようになるためには自己研鑽が必須の職種です。普段の仕事をこなす+法律のお勉強+英語のお勉強+会計のお勉強+α。まあしんどいですね。周囲の同期たちが飲み会や合コンにふけっているのを横目に机に向かわないといけない、なんてこともよくあるわけです。他が遊んでいる時間に自分は遊べず、上司からもそれが当然のように言われてプレッシャーかけられると。とりあえず他より楽ができる仕事でないことは間違いなしです。

 まあでも、それは仕方がないでしょう。自分で選んだ職種なんだし、頑張ってれば上を目指したり待遇がよくなったり期待できるし。

 

...いや、しなくない?っていうか無理じゃない?というのが2点目に繋がります。

 

理由その②

「管理部門はコストセンターだから少しでも出費が出ることは罪だと思え」

 

 言い方の柔らかさや多少の文言を代えて、このような趣旨の話を一体何度されたことやら。要するに管理部門だから

・お前に払う残業代は無駄だから残業は一切ならぬ(1.2年目の私にそんな無茶な)

・雑用や掃除は他部署の分も率先してやれ

・早出して創業者の銅像や入り口付近を綺麗にしろ

・(営業部には実施している)製品研修は業務時間にやらせるとコストになるから、プライベートな時間を使って自分で製品を触れ

 「会社のコストにならないために能力を向上させていただきます」みたいな気持ち悪い文章をよく分からない研修レポートにも散々書かされたり。

(今から思うと単なるマインドコントロールです)

 会社全体からの法務に対する評価も低かったですね。おだてれば色々と雑用引き受けてくれるぞっていうのが周囲にばれてたので、上辺だけの「プロフェッショナル」「重要な役職」なんて言葉はたくさん頂きましたが。

 

 現状厳しい扱いを受けているからと言って将来も厳しい待遇になるとは限りませんが、ここまで雑な扱いを受ける部門に所属していて先があるとはどんな楽天家でも思わないでしょう。役員構成見てると経理から出世の可能性はありそうでしたけど。法務は無理、無理でないにせよキャリアかけてまでコミットするほどの可能性はありませんでした。

 法務での出世が難しいという理由につき、奥村先生の下記ツイートが大変参考になりますので是非ご参照くださいませ。

 

 

理由その③

 総合職だなんだと言われても、やはり法務の本質は事務職です。事務職の典型的なデメリットとして

・定型作業が多い(自分の裁量なんて出る幕も無い)

・労働集約型であるがゆえに自身の評価や給与にレバレッジが効きにくい

・プロダクトが日の目を見ることは滅多にない

 

 身も蓋も無い言い方をすれば、面白くない上に楽もできないの一言に尽きます。

 プログラミングの発達やAIの登場で事務作業に注力してる場合ではないという危機感を持っているにもかかわらず、振ってくるのは事務仕事ばかり。マクロや電子化で作業を減らそうと思えば「仕事をサボりたがるゆとり」の烙印。散々手間隙かけて作った契約書は日の目を見ることなく(当たり前だけど)保管用ファイルに一直線でおしまい。何だこの仕事は?

 

 営業さんのように数字で挽回するみたいなことができないので、上司の匙加減次第で評価が決まっちゃうというのもキツいところ。

 古き良き(イヤミやで)会社だと、前述した諸々の雑用に加えて、飲み会での宴会芸強要や休日消費型のレクリエーション企画幹事なんてのもざらに有るわけです。グチグチ。
そして受諾を渋ろうものならエンドレスパワハラの繰り返しが始まります。こういうのをやりたがらないのは普段世話してもらっている感謝の気持ちが足りないだの、これも仕事だから出る義務があるだの。じゃあ休日出勤扱いにしろよって話なのですが。グチグチ!

 サラリーマンである以上そういうところで評価がついてしまうのはやむを得ないのですが、にしてもこれは酷いだろうと。

 法務の大きなメリットに「転職が容易」があるって聞いてたのに、このままじゃまともな条件で転職なんてできん!と焦りを募らせ、溜まりに溜まった焦りが法務への失望に変わっていくのでした。

 

 

それではここで上記3点をまとめてみると

他の職種より技能向上に負担がかかり

会社からは無駄金使い扱いされて「雇っていただいてありがとうございます」アピールをしなくてはならず

スキル向上につながりそうにもない雑用が山ほど振ってくる

楽もできない上に裁量も無くプロダクトが日の目を見ることもない 仕事

が、当時の私の「法務職」だったのです。これは嫌になると思いません?笑

 

 3~4年程法務として働いた私は、こうして法務が嫌いになっていくのね、ということで法務をやめる決意をして退職したのでした。

 

 

...辛気臭い話ばっかりですいません!

ちゃんとポジティブなオチが待っているのでもう少しお付き合いくださいませ。

 

単なる事務職を超えられるか

(事務職は会社に不要であるという趣旨ではない。念為)

 ここまで法務のことをボロクソに言っておきながら、現状でまだ法務としてやっているのは惰性ではなく「法務は頑張る価値があるポジション」という意見に変わったからです。

 

 今の職場には、事務作業を減らす工夫を「またゆとりがサボろうとしている」と言ってストップかける上司はいませんし、上辺だけでなく本気で重要職として扱ってもらえて、自分の考えは尊重してもらえる裁量もありますので、上記の理由その①で挙げた「自己研鑽に要する負担が大きい」ことを踏まえても良い職だよなと思います。会社規模が小さくなったとはいえ、経営に近いポジションを経験できたのは変えがたい経験でした。

 また、水野先生の法とデザインの副題である「創造性とイノベーションは法によって加速する」というのが理解できると一つ壁を越えられる(かつ自分が理解していると)と勝手に考えてます。あれがダメだこれがダメだと指摘して人のビジネスの助けになっているかどうか分からない状況から、自分の力で自社のサービスや人事制度の向上を手助けできるわけです。法務という仕事に対する見方が変わってとっても楽しくなりますよ。

 

法のデザイン?創造性とイノベーションは法によって加速する

法のデザイン?創造性とイノベーションは法によって加速する

 

 
(ルール=人を縛るだけのものという既成概念を変えられるんだ、ということが分かったような気になっている自分に酔っているだけというのは否定しません笑)

 人間の重要な欲求に「承認欲求」というものがある以上、役に立ってるかどうか分からない仕事を続けるというのは難しいものです。目に見えた結果や実感が得られるフェーズに入れるか、入れるところまで我慢ができるかというところが分岐点かなと。

 

 前職時代は少なくとも一日に5回(起床時、出勤前、仕事前、昼休終わり際、退勤時)は仕事嫌だ会社辞めたいと思ってた私ですが、今の仕事に変わって2年ほど経った今でも一度たりとも会社行きたくないと思ったことがありません。正直手元の仮想通貨が1億になろうが2億になろうが仕事はやめないぐらいには気に入っています。

 それは仕事が楽だからじゃないのか?いえいえ労働時間も対応している案件量も前職時代より激増してます。案件管理用のタスク表見てると増加量が顕著ですね。

 

 結局のところ、見切りをつけるほどに私が法務を嫌ったのはその会社固有の事情による部分が大きかったのだなあと。

 

 最後に一部例外(会社を変えても法務は好きになれない)として、本人の志向や適性と合わない場合。こればっかりはどうしようもなかとです。営業がやりたくて仕方がないのに管理系に配属されたとか、インプットが苦手以前に文字読むとかのが苦痛な人から法務への拒否反応なくすのは不可能に近いところ。そんな状況本人にとっても会社にとっても不利益なので、早めに職種転換をさせてあげるのが賢明です。受け入れられなければ結局転職という選択肢になってしまうのですが...

 

 というわけで、「企業法務ってくだらないですよね?」という問いかけを自分が受けたときは
 くだらないと思った理由を聞いてみて、それが事務職に対する不満である場合は職種転換を、法務という仕事に対する不満である場合には「会社変えてみたら?」という答えを返してあげることになるのかな、と思いました。

 

 

ベンチャー法務は面白いぞ、というポジショントークを最後に添えて)