リーガル・レバレッジ

リーガル・レバレッジ

コンサルに転身した元企業法務パーソンが、自分の市場価値を上げようと模索する日々を綴ります。

"スタッフ"を続けることがいかに危険か 取捨選択で切られるのはスタッフから

戦略とは取捨選択であり、スタッフを続けているとということは常に「捨」に回らされるリスクがつきまとうのだな。なんてことをGoToキャンペーンを見ていて、そして今の自分の立場を俯瞰してひしひしと感じていました。

そんな流れで久しぶりにキャリア論の話です。

 

ちきりんさんのブログによると、GoToキャンペーンは「安全だから開催」ではなく「日本の数少ない競争力を持つ産業である観光業を救うために、国民の安全と引き換えに決行」であるとのこと。

https://chikirin.hatenablog.com/entry/2020/07/17/Go_to_キャンペーン大混乱について

私も全く同意見です。

 

戦略とは何か。あるべきと現状の乖離を埋めるための大きな方針であり、最重要のタスクに「注力分野の取捨選択とリソースの再配分」があります。これをGoToキャンペーンにあてはめると

 

あるべき:日本の観光業は元気でないといけない

現状:コロナで観光業が壊滅的

戦略:廃業を減らせる程度に観光業を潤わせる

施策:GoToキャンペーン実施

施策導入によるデメリット:国民の安全

 

となります。国民の安全は観光業の潤いと天秤にかけられて「重要性が低い」と判断されたと。要するに取捨選択の結果捨てられたわけです。

 

国の問題がどうしてキャリア論に関係するのか疑問でしょうか。「国と国民」を「会社と社員」に入れ替えるだけで全く同じ構造になりますので心配無用です。

 

会社の業績がコロナの影響で不調で、不振事業を会社から切り離す必要があり、あなたはその事業で一筋20年としましょう。ある日告げられるわけです。

「コロナでにっちもさっちもいかなくなった。この事業はたたむことになり、本社にも受け入れの余裕はない。ついては退職してほしい」と。

 

戦略で「不振事業の整理」が採用されると「従業員の雇用」が犠牲になる事例です。全体の利益を追求するために重要でない個人は犠牲になるのです。GoToと一緒でしょ。

 

問題の根元は何か。

自分が「代替可能なパーツだから」の一点に尽きます。もっと極端に言ってしまうと、あなたは(そして私は)エクセル上の数字"1"でしかなく、コロナで後遺症が残ったり死んだところで違うセルの"1"がスライドしてるくるだけ。社長以外のどのポジションにもある程度は当てはまる話ですが、特にスタッフにおいては顕著な傾向です。

 

スタッフとしてどれだけ優秀であっても

・母数があまりにも多く

・一人で創出できる価値には限界があり

・末端が会社に与えられる影響は知れている

ので。

 

 

全体のために捨てられるリスクを減らすためにどうすればよいか。

対策としては「捨てられないよう代替可能性を減らす/いざ捨てられた場合でも生き残れるよう柔軟性を高める」以外にありません。つまり、スタッフから抜ける道を探して、その道に向かって進むのが何よりのキャリアにおけるリスクヘッジと。このブログのメインメッセージはここです。

 

目立たず騒がす平穏に生きていきたいラスボスといえば吉良吉影ですが、末端として得られる平穏は束の間のもの。環境が変わるたびに捨てられるリスクは負いたくないです。少なくとも私は。

 

 

ジョブチェンして2年が経ち、慣れてきてようやく楽しくお仕事ができるようになってきたのですが、上記のとおりスタッフでい続けることのリスクを感じてしまい目線が外に向いてきました。

(ジョブホッパーとでもなんとでも呼ぶがいいさ)

 

わりと名が知れているコンサルファームに転職できて、しばらくはキャリアに悩まなくてよいなと安心していたのも束の間に。転職の時に埋まったあるべきキャリアと現状のキャリアにまた乖離が出てしまいました。キャリア戦略の再構築を迫られています。

今すぐに転職とかは考えていないのですが、とりあえず仲良しエージェントさんにコンタクトを取ってお話ししてきます。

「待遇重要だけど何よりポジション優先で」が軸になるのかなあと思ったり。悩みは尽きないですね...

思い出したい本がある(業務改革・改善編)

「あーこの本はホントに読んで良かったなー。忘れられない一冊になった」

と思った本の記憶が翌日時点で既にふわふわな経験はございませんか。私はあります。悲しい。

記録の大事さをあらためて感じるとともに、似た境遇の人のお役に立てればと思いブックレビューのエントリです。

 

“コンサルが読むべき本“系のブログやまとめは世の中に山ほど存在してます(ニーズがあるんでしょうね)。そんな中で経験2年のひよこコンサルの私が同じようなことを書いても読み手にメリットが有りません。

 

そこで、「これは事業会社で法務やってる時に出会いたかったな」と思わされた

私が実際に読んで、これは自分の課題解決度合いが高かったと実感させてくれた

・法務・総務のお仕事に活かせて

・コンサルスキルの向上にもつながる 

本に絞ってご紹介します。お仕事のクオリティ向上だけでなく、コンサルや他職種に転職したい人にも。

 

アジャイルで始めて継ぎ足し継ぎ足ししていく予定です。秘伝のタレ的に。

 

目次

 

更新記録

2020/05/03

”業務改革の教科書--成功率9割のプロが教える全ノウハウ”を掲載

2020/05/16

孫社長にたたきこまれた すごい「数値化」仕事術”を掲載

 

業務改革本への向き合い方 

法務業務は管理系ですのでコスト削減の要求がうるさく言われ、非効率の改善は良く議題に上がります。また、最近の超トレンド「ハンコレス」のためには電子契約ツールを導入する必要があり、これはデジタルツールによる業務改善ですのでノウハウをまなばないといけません。読むべきの優先度は「高」だと思います

 

古めかしいおじさんはトヨタ式の改善本を押し付けてくることが多い印象です。内容が優れているのは間違いないのですが、メーカーの生産現場に焦点を当てた本をホワイトカラー的な職種の業務改善へ無理に当てはめても上手くいきません。

 

「電話のコール数3回以内が管理部門のKPI」に象徴されますが、無理な数値化は歪みを生むだけ。 効率よく業務改革を学びたければ「自身の業務ジャンルに近い」業務改革本を選ぶのはマストです。

 

業務改革の教科書--成功率9割のプロが教える全ノウハウ

 

特に響いた一文

・定性効果も大きな効果であることは変わらない(むしろ定性の方が意義が大きい場合がある

業務を標準化したり簡略化することには、必ず痛み(部分的に非効率になること)やリスクを伴う

 

概要

実際に業務改革コスト削減の号令が出て対応しないといけない。でもどうやって計画を立てればいいか分からない、いざ着手はしてみたがやり方が分からずいたるところで頭や手が止まる。

業務改革に着手した人なら大概がぶち当たるお悩みです。そんなお悩みを解決してくれるのが本書ですが、この本が特徴的なのは解決策の引き出しの多さと具体性です。業務改革で悩んだことの9割型はこの本に乗ってるんじゃないかと思うくらい。


業務改革の全体像と一連の流れ(チーム立ち上げからクロージング、振り返りと効果測定まで)に沿って充実した個別論が記載されています。総論各論共に質が高いので誰が読んでもハズレ感を感じさせないステキな作りに。

特徴

本書の特徴である具体性の例として、過去プロジェクトのクライアントが実名でインタビューを掲載してくれています。

「古川電工での人事BPRプロジェクトでは業務効率を30%上げることが目的でした」など。機密管理の重要性が高いコンサル本で実例掲載はさすがにビックリ。おかげさまでめちゃくちゃイメージしやすく助かりました。

 

ノウハウ部分もとても具体的・実践的です。これは使えるなと思ったトピックだけでも

  • 改革のコンセプト・ゴールの決め方
  • 現状分析の進め方フレーム
  • 改善施策の王道
  • 業務改善効果の定量化方法
  • 定性的な効果の扱い(無理やり定量化?それとも書かない?)
  • 改革反対派との向かい合い方、対処方法
  • 役員向けリスクシナリオの作り方

などなど。上記は一例でトピックだけ出しているのにこの量。本書の充実さがうかがえると思います。

「定性的な効果の扱い」あたりは、業務改善による定性効果の多い法務業務を担当している方には特に役に立つと感じました。

 

目次部分に微妙な誤字があるのが玉に瑕ですが、なぜそんなところを見てるのかって?

今後の参照用にエクセルで目次の一覧を作ったからです。それだけ気に入りましたということで。

 

余談

この本良いなーと思ってツイートしていたら、GVA法律事務所代表の山本先生からリプライを頂きました。 

 

 「君の本の名は」で映画化間違いなし。何という偶然。
自分の眼の付け所は悪くなかったと一安心でした。

 

GVAつながりで、デジタルツール活用と仕組みの構築で法務業務の品質向上とスピードアップを両立させているお話。法務業務に特化している内容なのでとても参考になるかと思います。合わせ技でこちらもぜひ。

ai-con-pro.com

 

孫社長にたたきこまれた すごい「数値化」仕事術

 

特に響いた一文

・数値化は、過去を振り返って満足するためでも、だれかを悪者にしたりするものでもなく、未来を作るためのものである。そのことを、ぜひ肝に銘じてください

・「最終目標」を達成できずに悩んでいる人は、日々の行動に落とし込んだ中間目標を設定することが不可欠です。その際は、自分で管理できる行動に対して、数字で目標を決めることが重要です

 

概要

ジンスケ(@hell_moot)せんせがツイッターで紹介しておられたので読んでみて大当たりだった本。「数字で説明してといわれても数値化ができない...」と悩んだことがあるのは一度や二度ではなく、私もその一人でした。

 

数値化はあらゆる場面で必要となります。DX(電子契約導入含む)や業務改革をしたければ現状把握・分析をするのが前提で、共通認識を作るために定量的にする必要。データドリブンな業務をしたければデータ分析が前提になり、データ分析のためには数値化が必要。などなど。 

 

業務改革の全体像としては、①改革の目的決め、②現状調査・分析、③あるべき姿の設計、④意思決定者による承認の4ステップがあり、本書は②の現状調査・分析に関する書籍です。

この分析次第で、そもそも業務改善をやるのかやらないのか、やるとしてどのようにやるかが大きく変わる部分なので、業務改革したいのであれば習得必須なスキルです。

 

特徴

数値化の重要性についてだけであれば言及されている本はたくさんあります。しかし最大のお悩み事はそこではなく「どう数値化すればいいのか」です。

「高度な統計・エクセル知識がなくてもOK」が不当表示としか思えないような数値化本もある中、この本は本当に実践可能な内容を書いてくれています。

 

数値化仕事術を実践するための7つのポイントが挙げられていますが、特に私の役に立ったのは

  • 数字は「与えられるもの」ではなく、自分で「取りに行く」もの
  • 数値化のファーストステップは「分ける」。数える前にまず分けろ!
  • 数値化のゴールは、現実の問題を「数式で表す」こと

の3点です。

後編で紹介されている分析ツールも良い内容ですが、別の分析系書籍でもカバーできてしまうので、注目すべきは分析の前提である「数値化」の部分。どうやって数値化したらいいか?数値化したけど運用が上手くいかないぞ...といった数値化に関するお悩みを一括で解決してくれます。

 

法務DXへの活かし方として、契約締結手続をプロセスに分けて表現し、各ステップでどの程度の工数が無駄になっているかを意思決定者に提示することが考えられます。といかこれはマスト。はっしーさんがサリデザにきれいなステップ分けの図を上げておられるので、丸パクリするくらいの気持ちで参考にして作ってみると良いと思います。論文試験と一緒で図解もまずは写経から。

 

成果・アウトプット例

最後に、私の場合はこう活きたよって実例をお話しします。

 

①分析能力向上

分析は業務改革に限らずあらゆる業務で、特にコンサルでは重要なタスクです。転職直後だと分析能力不足に悩まされていました。

「分ける」が大事とは分かっているけれどどう分ければいいのか...で壁に当たっていたところ、少し問題解決。分け方はプロセス以外にもいっぱいありますが、めちゃくちゃよく使う分け方の一つです。業務分析やKPI策定の際によく参考にしていました。

 

②スライド作成力

法務からコンサルに転職してまず壁に当たったのが「パワポの扱い」でした。ワードを使えない弁護士や法務のように、アウトプットを作るツールの扱いが下手だとパフォーマンスに致命的な影響が出ます。

 

転職からそこそこ時間が経っても上達せず、どうトレーニングしたらいいかも分からなく途方に暮れることに。ここでこの本を参考にしました。

図れる指標を目標にする、つまり「良いスライドを作った数」ではなく「スライドを作った数」に焦点を当てて一日1枚優秀な人のスライドを丸パクリするトレーニングを実践。これはマジで効きました。ツイッターとかで作った図をちょくちょくアップするのですが、「綺麗」「メッセージが伝わる」等のお褒めを頂いてます。うれしいです。

 

③法務の目標設定と数値化

数値化を法務の目標設定と絡めて書いた昔のエントリーはこちら。

 

使えそうや課題解決に繋がりそうといったコメントが多かったので、数値化に関する課題を感じている人は多いのだなあと。

 

 

マーケティングとは「組織革命」である。

Coming Soon 

人を激詰することのリスクについて

 

「なんでミスしてんだよ。この程度ができないゴミに生きる価値ないぞ。次やったらぶん殴るぞ」と言えば、人はミスをしなくなるのでしょうか。

 

 

昨日でJR西の福知山線脱線事故から15年になるとのこと。

脱線した車両の行き先に”同志社前”が入っており、同志社を志望校にしていた自分は「生まれるのが何年か早ければ巻き込まれていたかも」と思って背筋がぞっとしたのをよく覚えています。
実際に同志社の学生さんが被害を受けたニュースも聞き、人ごとには感じられませんでした。


事故そのものも印象的でしたが、もう一つ記憶に残っていることがあります。ミスにより107人もの死者を出した運転手への安っぽい正義感です。今思うと本当に短絡的だったなぁと反省するのですが。

後に事件を調べて「日勤教育」と呼ばれる教科書通りのパワハラを集積したような制度を知り、悪いのはミスをした乗務員だけではなく「組織や制度を作っている人」だと思いを改めました。

 

日勤教育」の罪

運転士は規則の範疇を大幅に超えた運転をしており、これこそが事故発生の引き金となりました。その後の調査では事故に関係するバックグラウンド、いわゆる「なぜ」の部分が明らかになっています。

事故現場直前の伊丹駅オーバーラン。運転士が列車の遅延を回復したいがために無茶な速度で運転をし、車掌にオーバーランの虚偽報告(過少申告)を求めた交信に気を取られたためカーブ前のブレーキが間に合わなかったと。

本件運転士のブレーキ使用が遅れたことについては、虚偽報告を求める車内電話を切られたと思い本件車掌と輸送指令員との交信に特段の注意を払っていたこと、日勤教育を受けさせられることを懸念するなどして言い訳等を考えていたこと等から、注意が運転からそれたことによるものと考えられる。

事故報告書243Pより

http://www.mlit.go.jp/jtsb/railway/fukuchiyama/RA07-3-1-1.pdf

 

運転士本人が亡くなっている以上真意は永久に分からないところですが、なぜ運転士はここまでミスの挽回や隠滅に躍起になったのでしょうか。この大きな原因の1つに「日勤教育」が挙げられています。同じく事故報告書243P。

本件運転士が虚偽報告を求める車内電話をかけたこと及び注意が運転からそれたことについては、インシデント等を発生させた運転士にペナルティであると受け取られることのある日勤教育又は懲戒処分等を行い、その報告を怠り又は虚偽報告を行った運転士にはより厳しい日勤教育又は懲戒処分等を行うという同社の運転士管理方法が関与した可能性が考えられる。

 
日勤教育とは要するに目標未達の場合の激詰めのことです。実態としては

  • 乗務員休憩室や詰所、点呼場所から丸見えの当直室の真ん中に座らせ、事象と関係ない就業規則や経営理念の書き写しや作文・レポートの作成を一日中させる
  • トイレに行くのも管理者の許可が必要で、プラットホームの先端に立たせて発着する乗務員に「おつかれさまです。気をつけてください」などの声掛けを一日中させる
  • 敷地内の草むしりやトイレ清掃などを命じるなど、いわゆる「見せしめ」「晒し者」にする

といった内容が他の運転士へのインタビューで明らかになっています。しょーもない。

また、乗務が減るため乗務に関する手当てが減り、事故を起こした運転士が給料カットについて「キツイ」との愚痴を友人にこぼしたりしていたことも報告されています。

 

ミスをした時の修正が必要なのは間違いありません。とはいえ、こんなシバキ上げで運転ミスが減るわけがない。

人は自分の利益が最大化するよう動くもので、苛烈に怒られるのを避けれるためであれば隠そうとするのは自然な行動。ミスを減らすための日勤教育が、ミスを減らすどころか重大インシデントの引き金になったのはあまりにも皮肉ながら当然の話といえます。

 

不正の動機は2つ

人はなぜ不正を犯すのでしょうか。懲戒はもちろん刑事罰のリスクを負ってまで不正をするのだから、相当に強い動機があることになります。

 

法務をやっていれば人の不正を見る(見ざるを得ない)ことがあり、動機をグルーピングすると大きく2つに分けられます。
動機は自分が利益を得るために行うものですが、金銭的な利益を得るため(例えば横領)は典型ですがもう一つ、ペナルティーから逃れるためがあります。

 

売り上げ目標未達のために架空発注、いじめが発覚したら担任がつるし上げられる学校でいじめが隠蔽されるなのはまさに典型事例。今回のオーバーラン距離ごまかし依頼もそうですよね。

金銭的なペナルティだけでなく、上司からの叱責やつるし上げの回避が動機となることも多々あり。金銭を失うのと同じかそれ以上に精神的な攻撃は人の心をえぐるもので、そう感じるのは自分だけではないのだと事例を見て感心していました。

 

不正が責められるべき行為なのは間違いないにせよ、後者のように消極的な動機で不正に手を染めた人を責めるべきなのでしょうか。悪の根源はそこじゃないですよね。

 

相反する組織と個人の利益を一致させるには

一人一人が組織のために正しい行動をとる確率を高めるにはどうしたらいいのか。USJの大成功で有名な森岡毅先生は著書内でこう語っておられます。

「人間の本質は自己保存だ」と。

 

一見は他者のために見えることですら自分のための行動で、「人に親切にする」のは自分の存在価値を確認したい自己保存、「命を賭して子を守る」のは後世に自分の遺伝子を残す自己保存。ドライながら納得感のある話です。
ミスをした運転士の頭の中が「オーバーラン距離のごまかし>安全運転」となってしまうのも自然な話。

 

一方で、組織の最上位の目的は「組織存続」です。組織は組織の存続を最上位の目標に掲げているのに、組織を構成している最小単位である個人は自分の利益を第一に考えるから利益が相反するのですね。

会社としては明らかに業務改革が必要なのに、あれやこれやと理由をつけて改革を拒否する重鎮おじさんで例えるとイメージ付きやすいでしょうか。改革して企業が良くなるより楽して高い給料もらい続ける方が良いに決まってますからね。

 

組織と個人の利益ベクトルを一致させる必要があり、そのためにはインセンティブかペナルティが必要。そして、インセンティブだけでカバーしきれない部分をペナルティでカバーするのも必要。これは間違いありません。

ただ、ペナルティによる人のコントロールには慎重であるべきです。「人を詰める」施策が組織と利益の相反を埋めるどころか加速させるリスクを抱えるものであるのは、脱線事故が教えてくれたとおりです。

 

 

子供が生まれて6か月。我ながら育児も板についてきました。

嫁の体調が悪い時は大部分を代行して感謝されたりするのですが
育児初心者時代でも「どうしてこの程度ができない」「使えないなーもういい。代わって」と責められたことがなく。慣れないなりに上手く誉めてモチベーションを引き出してくれた嫁の功績は大きいと感じています。

世間が感じている以上に「詰める」は人の心をすり潰すし、「誉める」は人の背中を押すことが広まるといいのにな、と思います。

 

2019年振り返りとか2020年以降の戦略とか

元旦なので、2019年の振り返りと2020年の予定を書きます。言語化しておくのは書き手にとっても読み手にとっても大事なことですね。

 

ブレイクポイント

「上手くいかない」がひたすら続くとメンタルが折れます。メンタルが折れればモチベが出ません。モチベが出なければ上手くいきません。

 

そんな典型的な負のスパイラルにハマりそうだった、いやハマっていた2019年初頭でした。しかし本当に運良く負のスパイラルから抜け出すことができました。ただひたすらにプロジェクトの巡り合わせなのめ実力ではなく運ですが背景はなんでもよろしい。

偶然にも助けられ「来年頑張ろうかな」という前向きなメンタルで新年を迎えることができました。

 

負のスパイラルから抜け出すきっかけが与えられたのは運でしたが、大きく復調させることができたのは努力です。

過去の案件や資料を見返し、コンサルの書いた本を読み、アウトプットしてみて、みたいなことを繰り返していました。ヒマな時間はありましたから。評価が低いコンサルには仕事は来ませんからね。ハハッ

 

基本動作でしかありませんが、繰り返して繰り返していると身に付きますし、結果として花開いたのが転職1年を過ぎたころくらいからでしょうか。ようやくポイントポイントで評価してもらえる場面が出てきました。

 

「どうせ辞めるならできる限りの知見は吸収してから辞めてやろう」

という完全に後ろ向きな前向きメンタルでしたが、殻にこもったり他責になるのではなく「手を動かしてみよう」と選択した9か月くらい前の自分はえらい。

 

色々と●●ドリブンシリーズはありますが

「思いついたことは片っ端から何でもやってみるドリブン」が一番好きです。先が見えなくてもとりあえず耐えてみて、手を動かし続ければブレイクポイントにたどり着けることを改めて実感できたのも収穫でした。

 

また、上司や同僚から受けるポジティブなフィードバックには代えがたい幸福感が詰まっていると再認識できた一年でもあります。

「バリュー出てるか」とか言うのは意識高い系臭がして嫌いですが、価値を提供する=人の役に立つことの大事さを噛み締める日々です。

 

やりたいこと・やるべきこと

もともとの転職動機が「サッカービジネスに飛び込みたい」でした。特にこの一年でサッカーに関係するお仕事ができたわけではないのですが、気持ちは衰えるどころか増す一方。ここは譲れない自分のミッションのようです。

 

サッカービジネスとの距離がちょっとづつ縮まっていて、でもちょっとずつでもどかしいのですが、やりたければやるしかないので頑張ります。目の前のお仕事含め。

 

また、なんやかんやでお話を頂くのは法務界隈であることが多く、リーガルは重点領域のひとつとして継続していくことにしました。

「法務やめちゃうんですか?」っで聞かれることは多いのですが、完全に足を洗うことはないかなと。法務スタッフとしてバリバリ契約書審査とかは絶対にしませんけどね。

 

一応想定しているのが

・リーガルテックの導入支援

・リーガル専門のキャリアコンサル

・法務組織構築支援

なんかができたらなあ、と思ってます。本業に集中したいので将来的な話です。

 

 

また、おまけの話ですが

ちょっとずつ「キャリアコンサルタント」という資格の勉強を始めています。上の「リーガル専門のキャリアコンサル」とも繋がる話です。相談してみたい方は是非どうぞ。

 

来年の予定

①本業で結果出す

ようやくちゃんとしたコンサルへの道筋が見えた(何をすればいいかすら分からない状態から抜けたの意)のと、足りないものを埋めるために何をすればいいかが明確になりました。

もう2年目なのであまりチンタラもしてられません。ギアを上げて頑張ります。

 

②交流を広げる

今年はTwitter経由で「お会いしませんか」オファーを多数いただき、初対面はもちろん再びのご対面パターンもありました。とてもありがたいことです。来年も引き続きTwitter経由でお会いする方を広げたく。既にオファー済みの方もいますし、随時オファーも受け付けております。お会いできた際はどうぞよろしくお願いします。
(東京はタイミングが合えばになりますが...)

 

デスクワークはきちんとやって当たり前、プラスで社外での活動もやらないといけないを改めて改めて実感しました。

お金と時間がかかって大変なことですが、今のところ東京に足を伸ばして「行かなければよかった」と思ったことがありません。

リターンが不確実なものにどれだけ投資できるかで人生は変わると思ってます。人と会うのもまた投資の一つなので投資し続けたいなと。

 

③お金を大切にしよう

無駄な支出を減らすのはもちろんですが、収入を増やすことにも妥協せずにいきます。

 

上述した「会いませんか」オファーにアクティブに反応できるようになったのは、心掛けはもちろんですが収入が増えたのがとても大きいです。

キャバクラで豪遊したい系の欲望はありませんが、自己投資するのに戸惑う年収で働くのはやはり辛いものがあります。

 

自由に動く・やりたいことをやる・嫌なことから距離を取るためにはやはりお金って素晴らしいものだと感じました。

現状お金には困らなくなったので、将来を見据えてちゃんとした年収を確保できるよう戦略的に動いていきたいですね。

 

 

とまあ、そんな感じです。

それでは今年もどうぞよろしくお願いします。

「法的リスク」を具体的に検討するためにはどうすればよいのか?

アドベントカレンダー、お疲れ様でした。表と裏があると正直追いきれないところも出てきてしまうのですがなんて嬉しい悲鳴なんでしょう。盛り上がるイベントって良いですね。

 

せっかくステキなエントリーが相次ぎましたの「読んでためになった」だけではもったいないなと。

ですので、エントリーを受けて私が感じたこと、考えが整理されたことを書いていきます。

 

スラムダンクアフターストーリ的に。良いように言った。

 

まずは宮下先生のこちらから。

 

 

 

参照する部分はこちら

 

9. リスク分析はリターンとのバランスで行うべし

−フェーズ④⑤におけるstrategic behavior−

 

法的リスクを“見える化”するためのフレームワークとしては、法的リスクを「法令違反そのものの影響の大きさ」「法令違反の発生確率」「ダメージコントロールの成功度」にブレークダウンするアプローチがオススメです。なお、このフレームワークについては、紙面の都合(大人の事情)で、拙著「事業担当者のための逆引きビジネス法務ハンドブック」の「法的リスク」(2頁〜9頁)をご笑覧頂けますと幸いです。

 

 

法的リスクを分解して考えようという話です。このフレームには法務時代ほんとによくお世話になりました。

気になっている方も多いみたいですので、フレームを使う必要性や使ってみて感じたメリットを書きます。

「リスク検討の流れが分からない」

「検討したはいいけどビジネスサイドへの伝え方が分からない」

なんて人のお役に立ちそうな内容です。

 

あなたの仕事は意思決定の材料を提供すること

「法的リスク」とは何を指すのでしょうか。素直に訳せば

"何かしら法律が絡みそうな不確実性"

ですが、もはや抽象的を通り越して意味がわからないレベルです。

 

「俺は難しい仕事をしてるんだぜぇ」的な雰囲気を出したいだけならまだしも、ビジネスサイドに(というか誰に対しても)意味が分からないアドバイスをするのはよくないですよね。

 

法務パーソンであるあなたの仕事は、法的な観点から案件のリスクを分析し提供することで意思決定者の決定をサポートすることです。

 

抽象的なアドバイスでは意思決定できません。具体的な話をする必要があり、アドバイスを具体的にするためには案件のネガティブなリスクを「分解」して検討する必要があります。

 

粒度は細かく精度は高く

『「リスク」は抽象的な概念だからこそ具体的な検討をしましょう』という話です。

 

古来より「この案件にはリスクがあります」との言葉は禁忌とされています。

口にしてしまった法務パーソンは1人の寂しいクリスマスを過ごす確率が高まる呪いにかかります。

これはなんの根拠ない私の創作ですが、法務パーソンとして口にしてはいけないフレーズTOP3に入るのは間違いありません。

 

リスクとは直訳すれば不確実性であり、世の中に不確実でないものなんてありません。そこまでリスクを気にして生きるなら「食中毒リスクを考慮して水を飲まず、風邪のリスクを考慮して息をしない」ぐらい徹底したスタンスが求められます。

 

「リスクがあります」では何も分かりませんが

 

インパク

「類似の判例から損害賠償の額はXX円と想定され」

発生確率

「訴訟となる可能性は大で」

コントロール可能性

「経営状態を考えるとリカバリーできない事態となります」

 

と聞けばある程度状況は理解できます。

 

「分けて考える」はコンサルの基本中の基本で、かつとても重要で良く使う考え方です。コンサルに入って一番役に立った思考をどれか一つ選べって言われれば「分解」と答えます。

「分けて考える」クセをつけましょう。分解結果はツリーにすると分かりやすく良いですのですが、ビジュアライズの話なのでここでは置いておきます。

(Twitterに載せます)

 

リスク説明に説得力を持たせよう

個別にバラバラと

「トラブルが起きるかもしれません」

「とはいえ、リカバリーできる確率もそれなりにあります」

「あ、言い忘れてましたが紛争になって敗訴した際の損害賠償の額ですが...」

なんて話されても聞いてる側は理解できません。

 

まずバシッとリスク算定の全体感を示し、その後個別の検討に入りましょう。

「この三要素で大まかに抜け漏れなく検討できます」と言ってもらえれば、聞いている人も理解が容易です。

 

リーガルの話をするときに納得感を持たせるためのテクニックではなく、説明スキル全般の話でもあります。まずは全体感、そして個別の話、と。

 

加えて。個別の検討結果を聞けばビジネスサイドもなぜNGと言われてるかが分かります。

 

たとえば

 

結論

「ユーザーの行動履歴をベースに算出した内定辞退率を販売することは、自社のプラポリに定める利用目的ではカバーできておらず個人情報保護法違反です。」

 

インパク

「求職者ユーザーから不信感を持たれれば大幅な利用者側は避けられず、当社のビジネスに与える影響は詳しく算定するまでもなく「甚大」です。」

 

発生確率

「黙っていれば分からないと言いますが、過去に黙ってデータ売買したのがバレて炎上した案件はいくらでもありますし、トラブルになる確率は「大」です。」

 

コントロール可能性

「また、信用に関わる問題であるためレピュテーションの回復は相当難しく、リカバリーするのも困難です。」

 

まとめ

「以上より、発生確率は大、想定される被害も大、リカバリー可能性は低となり、法務としては「本新規事業は進めるべきでない」との結論になります。これだけのリスクを承知の上でもまだ新規事業として進めるのでしたら、メリットと比較しますので事業計画を見せてください」

 

って話をすると、具体的な感じがしてきません?

 

自分の実例は出せないのでニュースになった他社事例をざっくりと使わせもらいましたが、こんな流れで説明すると納得してもらえる確率は高まります。

 

「今は何の話をしているのか(確率?金額?回復可能性?)」を明確にするのは大事ですよね。

法的リスクの説明以外でも。

 

次はもっと良い仕事を

数値化できないものは検証できません。検証できなければ次に活かせません。検証の対象となるプロセスを残しましょう。

 

ざっくり「リスクがあります」では、今後のお仕事で今の案件を参考にするときになんの役にも立ちません。参考にすることはつまり比較することで、比較するためには数値化する必要があるます。

 

損害賠償の想定、ビジネスが止まることによる売上低下、発生確率の大中小...など。

 

「類似の案件でリスク中って判断してるから、今回の性質考えるとリスク小だよね」

「そもそも前回の賠償額想定は大きく見積もりすぎたよね」

「この類型の案件はリスク大が続いてるから、先に事業部に注意喚起しとくべきだよね」

なんてやりとりが可能になります。

 

そう、一言で言うとPDCA。それだけ。

 

あなたが検討したファクトは何か

そのファクトをどのように解釈したのか

どうやって最終的な結論を出したのか

を追えるようしたい、という当たり前の話をしています。

 

検討ポイントが人によって異なると品質にバラツキが出るだけでなく、上位者もレビューするのがしんどいですよね。そういったネガティブな事態を避けるためにあるのが「フレーム」です。

 

最後に心構えの話

小さく初めて大きく育てるのが何より大事です。最初から正確なリスク予測ができる人なんて絶対にいません。

 

考えて、検証して、蓄積して、考えて、検証して、蓄積して。そんな過程を経てリスクや数値予測の精度は上がっていきます。

いやだから当たり前の話なんですけどね。

 

リーガル界隈は「不正確ならやる意味がない」「最初から完璧にやってこそ」という、ビジネスの常識を完全に逆走する言葉やポリシーが幅をきかせる不思議な業界です。

 

実際にそういう人は多いとも感じます。出会ったことももちろんあります。履き違えたプロフェッショナル気取りは怖い。

ビジネスサイドへの転身とかポータブルスキルとかそれ以前の問題ですね。タコツボの中でしか通用しない常識は捨てて外に目を向けると良いと思います。リーガルを続けるにしても、ジョブチェンするにしても。

 

 

とにもかくにも便利なツールなのは間違いありません。ビジネスサイドへの説明が難しいなー、って悩んでる方はとりあえずで良いので使ってみてください!

「読んでとてもためになる良い内容だと思いました」は、書き手からすると嬉しいお言葉なのですが、思っただけでは何も成長できませんので