リーガル・レバレッジ

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コンサルに転身した元企業法務パーソンが、自分の市場価値を上げようと模索する日々を綴ります。

AI-CONを使ってみたぞ 後編

前回エントリーの続き。契約書のAIレビューサービス「AIーCON」を使ってみた感想です。あの、ところで読み方は「エーアイコン」で合ってるんでしょうか(シンプルに「アイコン」やったらどうしよ)。

※追記:シンプルに「アイコン」とのことです。失礼しました

 

前回はAIーCONアカウント登録から契約書レビュー依頼までをやりましたので、今回は本題である契約書レビュー機能に関する感想です。

ちなみに、審査依頼ボタンを押してから審査完了通知が来るまでの時間は3時間くらいでした。はやっ。

 

良いところ

修正必要ポイントのカテゴリ分け・重み付け

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条項は有利なのか不利なのか、有利/不利だとしてそれはどの程度なのかの重み付けもしてくれます。条項の重みは各会社の個別事情にもよるでしょが、一般的に考えてこれぐらいですよという相場観を出してくれるのは助かりますね。有利/不利だけでなく「ビジネスジャッジな事項ですよ」のカテゴリもあり。

 

有利不利の重みやカテゴリが分かれば、次のアクションをどうすればよいかのアイデアにも繋がります。これは法務で考えよう、これは営業に相談しよう、とか。ちゃんと企業法務担当者目線で使いやすいよう実用的な作りにしてあるなあと。

 

漏れ・余分な条項の発見にも対応

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当たり前の話ですが、契約書審査業務は書いてある条項のチェック以外にも「必要な条項が漏れていないか」「余分が条項は入っていないか」のチェックが必要です。というかこれが大事かつ面倒なんですよね。

 

抜けている、すなわち追加すべき条項はレビュー結果の最後にサジェストしてくれています。
余分な、すなわち削除含め対応につき要検討の条項は「判定不能」と表示してくれています。今回私が追加したのは競業避止義務です。「取引や提携を検討するための挨拶がわりNDAに入れんといてくれよそんなもん」と言いたくなるような条項ですね。レビューの結果は判定不能でした。

 

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条項につき相当数のデータ蓄積があるGVAさんのAIが判定不能って出すのは「何かしら変なもん入ってるんちゃうかな?」と疑問に思って手を止めることができます。判定不能なので修正例はサジェストしてくれませんが、その部分だけ自分で見るなり弁護士に相談するでよいでしょう。

 

気になったところ(リクエスト事項)

NDAは双方開示に対応してほしい

NDAレビュー依頼後に自分が情報の受領者側/開示者側のどちらかを選ぶ仕様になっているのですが、受領者でも開示者でもあるパターンはないみたいですね。タブで切り替えれば済む話なので大した話ではないですが、一応。

 

モバイル端末対応

iPadで見ると結構画面レイアウトが崩れてしまってちょっと見にくいなと。あんまりデュアルディスプレイの会社って多くないと思うので、iPadでも使えると実質デュアルにできてバリュー出そうな気がしました。クラウドサインはモバイル端末から見ている人の方が多いとのことで、モバイル向けのUIは需要あると思います。まあこれも決定的な話では全然なく。

 

...うーん。気になったところ、これくらいでしょうか。ダメなところがあまり浮かばなかったかな。NDA以外だとどうなるかやってみたい。

 

自分が使うなら

自分がAI-CONを使う場合、簡単な契約書なら不利・抜け漏れ・判定不能だけを見てさあGO、という流れで行くと思います。ポイントだけ検討すればよいのでだいぶ楽になるなあと。まずは簡単な契約書からバシバシ使っていって使い心地を試してから、徐々に複雑な契約も試してくとよさそう。

よく分からないところが有ったら担当の弁護士につながる機能も付いてるので、「ここからどうしたらいいんやろう...?」と手が止まらないようにできているの、ステキです。

 

一度依頼をかければ特に何もせず審査結果が返ってきます。退勤間際にとりあえずAI-CONに契約書入れておいて、日が変わって翌日にメールが届いたら開封して中身確認といった使い方もできそう。

夜間帯を活用してアウトプットを機械に作ってもらい、翌朝そのアウトプットを味わうといった使い方に心当たりがあります。そう、炊飯器です

 

「一晩かけてAIがふっくら炊き上げた契約書」

 

キャッチフレーズにどうでしょう。
ナシですか。左様ですか...

 

感想

クオリティに関して言うと、契約書審査業務における大事な要素がきちんと抑えられていて、結局人力でやった方が早かったみたいな事態にはならないかと思われます。
(簡単なNDAだけでしか実験していない、という点は念押ししておきます)

 

個人的に一番のメリットを感じたのは、抜け漏れや余分な条項のチェックをしてくれる点でした

漏れ・余分条項のチェックは人力オンリーでやるとかなりの可能性でミスが出る危険ポイントです。ゆえに書籍やチェックリストの活用が必要になるのですが、これがまた手間かかるし面白くないんですよね。これをAIが代替してくれるのはめちゃくちゃ助かります。

 

法務のリモートワークを妨げる主要業務に契約書関係業務があると思っています。理由は前述のとおり、本やチェックリストを常に持ち歩くのが難しいからです。

いちいち書籍やチェックリストがなくても契約書審査ができるようになる。法務のリモートワークを進めたいならマストのツールになりそうです。ていうかリモートワークしたいなら使いこなせないとキツいでしょうね。テック系全般に言える話ですが。

 

自分が法務担当だったらこれは導入したいなーと思わされる一品です。

検討中の企業法務パーソンの方、1件無料サービス使わない手はないと思いますよ。