リーガル・レバレッジ

リーガル・レバレッジ

コンサルに転身した元企業法務パーソンが、自分の市場価値を上げようと模索する日々を綴ります。

同僚の有給が教えてくれた「答えのない問題」とは何か

社会に出ると答えのない問題ばかり、とよく聞きます。それを身をもって体感した話です。

 

 

前職にいた時のことです。同僚に仕事のお願いをしに行ったところ「今日は午後休だから明日でも大丈夫?」と返されまして。

急ぎではなかったのでもちろんOKで回答しました。

 

しばらくして、彼が何か言いたそうに私の席近くをうろついているのが分かりました。

自分の経験上、こういう時は大概やむを得ない理由でお休みを取るのだと伝えられることが大半です。急いでいないとはいえ有給で仕事が遅れてしまうことに罪悪感を感じてしまっているのだろうなと。

 

模範的な法務パーソンである私の回答はもちろん「有給の理由を言う必要はありませんよ。急ぎの仕事でもないので全然気にしないでください」です。

 

もう完璧な回答。有休を取ることに対して負い目を感じさせない気遣いの一文に、リーガルに関係する者としての教養をトッピングした完璧な一品です。

 

「今日の回答は...星三つ!」

回答前にも関わらず自分の頭の中で堺正章さんが既にジャッジを下していました。

あとはそれを声に出すだけです。さあ。

 

 

同僚「ちょっといい?」

 

私「どうしました?」

 

同僚「今日の午後さ、ペアーズでマッチングしたメンヘラっぽい子とご飯に行くんだよね」

 

 

ーーーーーーそうきたかーーーーーー

 

 

もう完全にパニック状態でした。

相手の発言が想定していた問答から完全に外れた、何も浮かばない、でも何か言わなければいけないこの嫌な時間。

新卒の就活で「当社の社名を変えるとしたらどんな名前が良いと思いますか?」と聞かれた時の乾いた口の感じを鮮明に思い出しました。

 

この場合に同僚が言ってほしいことは明らかですね。「マジですか!どんな子なんですか?」以外ありません。

「メンヘラっぽい」というパワーワードを混ぜてくるのは、話を聞いてほしいのメッセージなのですから。

 

 

しかし、ここで大きな論点が出ます。有給取得の理由を言う必要がないのはもちろんなのですが、相手が言いたそうにしている場合なら詳細に掘り下げていいのかが問題になります。

雑談であっても社内で取得の理由を話していると、他の人に「自分も話さないといけないのかな」と考えさせてしまうからです。

 

回答を練る時間はありません。あまり考えこんでいても相手を不安にさせます。

パニックで動かない頭を最大限振り絞って出して、出した私の答えは

 

 

「ああ、大丈夫ですよ」

 

 

 

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「えーマジ?相槌だけ!?」

「『ああ、大丈夫ですよ』が許されるのは幼稚園までだよねー!!」

「キモーイ!」

 

かの有名なキモーイガールズの声が聞こえてくるようです。

どちらを取ってどちらを捨てるかを決められず、最大公約数的な回答をした結果どちらも失った0点の回答です。自分でも反省しています。

 

とはいえ、こんな難しい問題があったでしょうか。有給の理由を聞けば法務としての矜持を、深堀しなければ友人として、人として大事なものを失います。

振り返っても未だに正解は見えてきません

 

「社会に出たら答えがない問題ばっかりだぞ」

就活時や就職してすぐに散々言われ続けた話の意味が、言葉でなく心で理解できた瞬間でした。

 

ちなみに後日談ですが、カフェデートの感想を聞いたところ「あんまり盛り上がらんかったし次はなさそう」とのことでした。

私が士気を鼓舞できていれば、言い換えれば私が労働法なんてものを学んでいなければ、世界に一つ幸せが生まれていたのかもしれません。

つらい仕事ですね。企業法務って。